平成26年5月号

〜知って得する健康講座  第65集〜 「アルコール依存症について」
                         心療内科・精神科 松永哲夫(益城病院 院長)

 酒は昔から「百薬の長」などと言われてきましたが、最近では1〜2合の酒でも脳が萎縮することが明らかになってきており、「万病のもと」というところが強調されて、酒好きの人は「困ったな〜」と思われているようです。しかし、「困ったな〜」と嘆かれる程度の方はまだ大丈夫ですが、「そんなことはない」と憤慨したり言い訳したりされる方はアルコール依存症の黄色信号かも知れません。

 酒をたくさん飲む人がアルコール依存症になる訳ではありません。そもそも大酒飲みとは、1日に「日本酒なら3合、またはビールなら1500ml、または焼酎ならお湯割りで3合」くらいを飲む人のことで、それくらいの大酒飲みは日本全国に1千万人近くいます。その中の約80万人が、遺伝的な体質が関係して、アルコールを原料にして脳の中でモルヒネやヘロインのような麻薬様物質ができるといったアルコール依存症になると言われています。ですから、飲んでいるのは焼酎なのに、身体はいつのまにか麻薬中毒になってしまい、「飲むと元気になるが、飲まないと元気が出ない」から始まり、「飲まないと眠れない、眠っても2時間くらいで目が覚める。飲まないと指がふるえる」といったような禁断症状(離脱症状)が出てきます。そのように恐ろしい病気ですが、入院しなくても酒をやめている人はたくさんいますので、早めに御相談下さい。

 そよう病院では下記のとおり心療内科・精神科外来を開設しております。
 電話096-286-3611(益城病院 外来受付)にて予約をお願いいたします。

  木曜日
  午前 午後
第1週 井無田へき地診療所
第2週 そよう病院 北部へき地診療所
第3週 井無田へき地診療所
第4週 そよう病院 北部へき地診療所
第5週 そよう病院 井無田へき地診療所

 

平成26年3・4月号

〜知って得する健康講座  第64集〜 「唾石症と粘液嚢胞 」        歯科医師 甲斐 義久

 今回は唾液腺(つばをつくるところ)のお話です。唾液を分泌するところは主に大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)と言われるところですが、それ以外にも 1〜2mmくらいの大きさの小唾液腺が、唇や舌、頬粘膜にたくさん分布し口腔内を潤しています。唾液腺にも様々な疾患がありますが、歯科でたまに見かける疾患、唾石症と粘液嚢胞をご紹介いたします。

●唾石症  
 大唾液腺に生じ、唾液腺の中や管の中に石(唾石)ができる病気です。特に顎下腺に生じ易く、大きさは砂粒くらいから数センチにおよぶものまであります。唾石の原因は唾液腺の炎症や唾液の性状の変化など様々ですが、症状としては特徴的なものがあります。食事の際、あごの下やほっぺたが徐々に腫れて、唾腺痛という激しい痛みが生じます。しかし食事をやめてしばらくすると、腫れと痛みが徐々に消退するのが特徴です。小さな唾石は開口部から自然排出されることもありますが、一般的には口底部にある唾液の導管内にとどまる唾石(photo1)は、口の中で切開して唾石のみを摘出します。唾液腺の中にできたものは、腺体ごと唾石を摘出します。

●粘液嚢胞
 小唾液腺や舌下腺に生じるもので、唾液の分泌が障害されたことにより周囲の組織中に唾液が溜まって袋のようなものができる病気です。原因としては口内炎や粘膜を噛んだりした時の傷が治癒する過程で、唾液を出す管が詰まってしまうことによって起こると考えられています。頻度としては小児に多くみられ、成人の方でもまれに発症することがあります。部位は下口唇粘膜や頬粘膜にできるものが最も多く(photo2)、次いで舌下面(photo3)、口底(photo4)の順で多く発症します。治療は小さいものは原因の唾液腺ごと摘出します。中等度〜大きな嚢胞、特にガマ腫については、嚢胞の半球部分を切除して唾液の流出路を確保する開窓療法をおこないます。


photo1:舌下小丘部における唾石症


photo2:口唇腺粘液嚢胞

photo3:前舌腺粘液嚢胞
(ブランディン・ヌーン嚢胞)

photo4:舌下腺粘液嚢胞(ガマ腫)

●最後に
 唾石症と粘液嚢胞とも、頻度としては少ないですが、稀に見られる病気です。お気付きの際はお近くの医師・歯科医師にご相談下さい。

 

平成26年2月号

〜知って得する健康講座  第63集〜 「乳がんの治療について 」 
                           研修医 植田 賢   医 師 竹本 隆博

 乳がんの治療は日々進歩を遂げているがん治療のひとつであります。乳がんの治療の中心は手術療法、薬物療法および放射線療法です。放射線療法は周術期には再発予防として、転移再発乳がんでは症状コントロール目的に行われます。

● 手術療法
 乳房に対する手術では乳房温存術と乳房切除術があり、患者の希望と整容性、腫瘍の大きさや場所、乳管内の広がりなどを考慮して術式を決定します。術後の病理検査で非浸潤がんと診断された場合、ほとんどの場合は局所療法のみで治癒可能です。

●化学療法  
 浸潤のある乳がんは早期から全身に微小転移をきたし、手術のみでは根治できない場合が多いと考えられています。化学療法は、近年は患者の年齢や全身状態、腫瘍の特性によって治療する場合もあります。 転移性乳がんに対する薬剤は多数承認されていますが、投与順序についての標準的な方法は確立していません。

●ホルモン療法  
 ホルモン受容体陽性乳がんに対しては、ホルモン療法が行われます。閉経前の患者に対しては抗エストロゲン薬(エストロゲンとは女性ホルモンの一種)が使用され、LH-RHアナログ(黄体ホルモン放出ホルモンの働きを模造した薬)を併用する場合があります。

●分子標的治療
 HER2は、human epidermal growth factor receptor type2の略語で、細胞の生産にかかわるヒト上皮細胞増殖因子受容体とよく似た構造をもつ遺伝子タンパクです。HER2陽性は乳がんの治療後の回復具合が悪いことを示す因子ですが、抗HER2薬であるトラスツマブの登場によって乳がんの治療の回復具合は改善してきています。トラツスマブはHER2に対する分子標的薬です。

 

平成26年1月号

〜年頭のごあいさつ〜              山都町包括医療センター そよう病院 院長 水本 誠一

 新年明けましておめでとうございます。皆様には健やかな新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。
 昨年は例年にもまして地球規模で自然災害に見舞われた一年でした。今年こそは穏やかな一年になることを願ってやみません。

 さてこのお正月は私にとって山都町で迎える 6回目のお正月でした。病院は常に医者の誰かが常駐しておかねばならず、年初めには院長の私が率先して年越しの日直・当直を行うようにしています。今年の年末年始は珍しく暖かく穏やかな天気でしたが、小児の熱発やお年寄りの肺炎などの患者さんが多く、毎日約30人の方が急患でこられました。山都町では例年お正月を過ぎると都会からさまざまな病原体が持ち込まれ、インフルエンザなどの感染症が流行してきます。少しでも流行が広がらないよう配慮しながら診療に当たる所存です。

 おかげさまで昨年11月には新病院が完成から一周年を迎えることができました。皆様のご期待に十分こたえられるような医療が提供できたか自信はありませんが、「病院らしくない病院、病める人も健康な人も集える病院」との考え方のもと、保健(健康づくり)、福祉(介護)サービスまでを総合的・一体的に提供する「地域包括医療・ケアシステム」の拠点としての活動が少しは展開できたのではないかと考えております。しかしまだまだ不十分な面もあるかと思いますので、住民の皆様方のご指導・ご指摘を今後ともいただければと考えますのでよろしくお願いいたします。

 今年の病院の行動目標として、「One for all, All for one (訳:一人はみんなのために、みんなは一人のために)」を掲げました。実力を持って自立した一人ひとりが協力し合って組織を運営し、職員個々人どうしも尊重しあい、組織一丸となって患者さんを治療してゆく、といった意味です。また公務員として地域住民とともに山都町を住みよい郷土にしてゆこうという覚悟も表現しています。

 昨年末に山都町の人口はついに17000人を割り込み、65歳の人口割合がほぼ40%になって、少子高齢化の先進地域となりました。さらに今年はTPPなど、一次産業が主力の山都町には大変厳しい問題も予想されます。もうこうなったら開き直って、「少数精鋭 All Yamato の精神」で、われわれの誇りある郷土を守りぬくしかありません。そよう病院は医療の面から頑張ってゆきますので今年もよろしくお願いいたします。


〜知って得する健康講座  第62集〜 「乳がんの診断について 」 
                           研修医 桑原 麻菜美   医師 竹本 隆博

  日本人女性では乳がんにかかる人の数は年々増加しており、特に40歳代から乳がんにかかる危険性が高くなります。そのため、40歳を過ぎたら2年に1回は乳がん検診を受けることが推奨されています。40歳未満であっても、発症リスクが高い女性は同じく2年に1回の検診を受けることが推奨されています。また自覚症状がある人は年齢に関係なく、医療機関を受診してください。  

 自覚症状としては乳房のしこり、乳頭からの分泌物、乳房の痛みなどがあります。  

 乳がん検診では乳房撮影(マンモグラフィ)、乳房の視診・触診が行われます。その結果に基づいて、医師が乳がんの疑いありと判断した場合に医療機関へ紹介されます。医療機関では乳房撮影(マンモグラフィ)、乳房の視診・触診に加えて乳房超音波検査が行われます。また必要に応じて乳房CT検査、乳房MRI検査が行われることもあります。最終的な確定診断は細胞診(乳房に細い針を刺して細胞を取り、顕微鏡で見る検査)、組織診(乳房をある程度の大きさで取ってきて、顕微鏡で見る検査)によって行います。  

 自覚症状がない場合、検診で異常なしといわれた場合でも定期的に自己検診を行うことが勧められます。

●発症リスク

○ 肥満
○ アルコール飲料の摂取
○ 喫煙
○ 家系内に乳がん患者さんがいる

●診療のながれ

●自己検診の方法

○ 鏡に向かい、左右差・変形がないかチェックする。
○ 渦を描くように手を動かして、乳房にしこりがないかチェックする。
○ 仰向けになって外側から内側に向かって指を滑らせ、しこりがないかチェックする。

 ※閉経前の人は月経終了後1週間くらいの時に、閉経後の人は毎月日にちを決めて行うとよい。