平成25年12月号

〜知って得する健康講座  第61集〜 「 乳がん〜疫学と遺伝〜 」 
                          研修医 松下 ?三     医師 竹本 隆博

 乳がんとは、その名のとおり乳房に発生するがんのことであり、近年その数は上昇の一途をたどっています。今回、そんな乳がんについて、疫学的・遺伝的な特徴を示します。

●患者数
 患者数は年々増加の一途をたどっています。2011年のデータでは、新規乳がん患者は約6万人にのぼるとされています。 また、その数は、女性がかかる全悪性疾患の1位となっております。(男性も乳がんになりますが、その数は女性の1/100以下です)

●好発年齢
 通常、がん(悪性新生物)という病気は、高齢者に多いものですが、乳がんに関してはそれとは異なり、年齢別にみた女性の乳がんの罹患(りかん)率は30歳代から増加し始め、50歳前後にピークを迎え、その後は次第に減少します。

●罹患数と死亡数
 女性では、乳がんにかかる数は乳がんで死亡する人の数の3倍以上です。これは、女性の乳がんの生存率が比較的高いことと関連しています。(男性の乳がんは、女性の乳がんに比べて生存率が低い(予後が悪い)ことが知られています。) 罹患率、死亡率ともに一貫して増加しており、出生年代別では、最近生まれた人ほど罹患率、死亡率が高い傾向があります。

●リスク因子

リスク増高因子 ・体内のエストロゲンレベルが高い
  ・経口避妊薬の使用や閉経後のホルモン補充療法
  ・初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がない
  ・肥満(閉経後)
  ・飲酒習慣
  ・乳がんの家族歴、良性乳腺疾患の既往、マンモグラフィ上の高密度所見
   
リスク減少因子 ・肥満(閉経前乳がん)
  ・運動
  ・妊娠および出産

●遺伝
 乳がんを発症した人の5〜10%は、遺伝的に乳がんを発症しやすい体質を持っていると考えられています。世界中の研究で、家族の中に乳がん患者さんがいる女性は、いない女性に比べて2倍以上乳がんになりやすいとされています。乳がんを発症した人数が多いほど、さらにリスクは高くなります。 BRCA1遺伝子もしくはBRCA2遺伝子に遺伝子変異が起こった場合、乳がん・卵巣がんの罹患率が高くなるとされています。この遺伝子が親から子に遺伝する確率は50%であり、子供たちの間でも遺伝子を持つ子持たない子がでます。また、この遺伝子変異を持っていても、乳がん・卵巣がんを発症しない場合もあります。

●遺伝性乳がんを考慮すべき状況

・乳がんと診断された年齢が若い(50歳以下が目安)
・一人の患者さんが同時にまたは異なる時期に、2つ以上の原発性乳がんを発症した場合(両側の乳房にて乳がんが認められた場合や、同じ側の乳房内に明らかに別の複数の原発がんがある場合を含む)
・一人の患者さんが、乳がんと同時にまたは異なる時期に、卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんのいずれかを発症している場合
・乳がん患者さんの父方母方どちらか一方の家系の近縁の血縁者の中に、乳がんと診断された人が2人以上いる場合、または、近縁の血縁者の中に、乳がんと診断された人が1人しかいなくても、ほかに卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんのいずれかの患者さんがいる場合 •
・乳がん患者さんが男性である場合

●最後に】
 女性の食生活の欧米化やライフスタイルの変化により日本人女性の乳がん羅患率は年々増加しています。「20歳を過ぎれば乳がん年齢」と言われる今、積極的な乳がん検診の受診をお勧めします。

 

平成25年11月号

〜知って得する健康講座  第60集〜 「振動病について」           医師 末綱 靖

●振動病とは
 削岩機やチェーンソーなど、振動を手・腕に伝える手持ち振動工具を使用することによって起こる健康障害をいいます。手腕を介して伝搬する局所の振動による障害をいい(手腕振動障害、局所振動障害、職業性振動障害)、通常、全身振動による障害は含みません。  
 振動障害は、主として寒冷時に発作的に現れる手指の白色化現象(レイノー現象)を特徴とする末梢循環障害、手指のしびれ、感覚鈍麻を主体とする末梢神経障害、肘関節より末梢の関節症状(疼痛、可動域制限)や握力の低下などによる運動器障害の3つから構成されます。  
 日本ではかつて白ろう病といわれ、山林労働者に多くみられ社会問題になりましたが、近年では建設業など、障害を起こす産業職場も次第に広がってきています。

●原因
 主たる原因は振動ですが、障害の発生には個人差があります。工具の振動レベル、連続使用時間、使用期間などの曝露条件に、騒音、寒冷を含む環境条件、加齢、喫煙習慣などが発症に関係しています。

●症状
 レイノー現象を主徴とする末梢循環障害、末梢神経障害、骨・関節障害の3つからなります。 振動病の最初の訴えは、手指のしびれです。次いで腕のだるさ、脱力感、しばしば作業後や夜間に腕の強いしびれと痛みが起こります。特徴的な所見は手指のレイノー現象で、全身に冷えを覚えた時に発症します。

●検査と診断
 診断は振動工具使用に関する職歴の問診、末梢循環障害ではレイノー現象を確認することが極めて重要です。末梢循環障害の有無に関する診断法は、安静時および冷水負荷(10℃で10分)、皮膚温検査、爪圧迫検査、サーモグラフィー、指尖容積脈波などが一般的に行われています。

●治療
 当時の労働省により「振動障害の治療指針」が示されていますが、早期に発見し、初期に治療することが重要です。 理学療法として、温熱療法、運動療法を組み合わせて行います(手指のパラフィン浴、ホットパック、温水・冷水の交替浴、マッサージ)。 薬物療法では、末梢循環改善薬、末梢神経賦活薬、精神安定薬を使います。
 日常生活の指導では、キャッチボールなど手指への振動刺激のあるものを避ける、保温、禁煙する、などが重要です。

●予防
 根本的な治療法がないので、予防が最も大切です。軽量かつ低振動レベルの工具の使用、工具の低振動レベル保持のための保守管理、使用時間規制の遵守、防寒・保温を含めた作業管理、暖房設備が整った休憩設備の利用などの作業環境管理、生活指導での寒冷期の保温・禁煙・体操などが大切です。

 

平成25年10月号

〜知って得する健康講座  第59集〜 「不整脈 その3 〜徐脈について〜」  
                             研修医 野田 智香     医師 佐藤 啓

●不整脈とは
 手や首に手をあてると「ドクッドクッ」と"脈"を感じることができます。これは心臓が拍動し血管に伝わったものです。正常な脈は眠ったり休息しているときにはゆっくりうち、運動したり熱があるときなどは速くうちます。何の誘因もなく、脈がゆっくりうったり速くうったり不規則にうったりすることを不整脈といいます。

●心臓の中での電気信号の伝わりかたと心電図
 心臓は血液を体中に送り出すポンプの役割を担い、一生休むことなく収縮と拡張を繰り返しています。これは心臓の規則的な電気活動によって行われており、この電気活動を記録したものが心電図です。心臓は4つの部屋に分かれていて上の部屋を心房(右房・左房)、下の部屋を心室(右室・左室)と呼びます。心臓の電気活動は右房にある洞結節→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ繊維と伝わります。

●徐脈とは
 正常の脈は1分間に60〜100回うちます。1分間の脈が60回以下のことを徐脈といいます。脈拍が少ないため、日常生活や運動に必要な酸素を体中に行き渡らせることができず、めまいや息切れ、過度の疲労感、失神などの症状がでます。

原因)
 徐脈となる原因としては、以下のものがあります。

・自然な老化現象 ・遺伝性心疾患
・お薬の影響(抗不整脈薬、抗うつ薬、高血圧・狭心症の交感神経を抑える薬など)
・心筋梗塞による組織変化によるもの
・甲状腺機能低下症
・洞不全症候群
   @洞性徐脈:洞結節に異常なし
   A洞停止:一時的に洞結節から電気信号が発生しなくなる
   B洞房ブロック:洞結節で正常に電気信号が発生しているのに心房に伝わらない。
・房室ブロック
   洞結節からの電気信号が心房までは伝わるが心室までは伝わらない。

治療)
 脈拍が40回/分以上で、心電図上異常所見や自覚症状がなければ経過観察となることが多いです。しかし症状や原因疾患によってはお薬(アトロピン、β刺激薬)の服用、人工ペースメーカーの植え込みの適応となる場合があります。健康診断や人間ドックの心電図検査で異常を指摘されたり、上記のような症状がある方は、病院を受診して診察を受けるようにしてください。

 

平成25年9月号

〜知って得する健康講座  第58集〜 「不整脈 その2 〜頻拍性不整脈を中心に〜」  
                             研修医 田中 健一  医師 佐藤 啓

 今回は頻脈性不整脈の話です。
 頻脈とは脈が速くなる不整脈で、通常1分間に120回以上、多いときには400回にも達します。脈拍が速すぎると、心臓が空回りしてしまい全身に血液を送れない状態に至ることもあります。頻脈をきたす病態には、前回話題にあがった心房細動の他に洞性頻拍、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動、WPW症候群、QT延長症候群などがあります。  
 また期外収縮といって、本来電気の生じる場所以外から早めに刺激が出てくるために起こる不整脈があります。単発では心配ありませんが、頻発してくると動悸などの症状を伴うこともあり、原因の検索が必要になります。  
 一方、息を吸うと脈は速くなり、息を吐くと脈は遅くなります。運動や体温の上昇でも脈は速くなります。これらの脈の変化は呼吸性不整脈といって病的なものではなく、生理的な反応と言えます。  
 では、これらの中で特に重大な不整脈を一つ一つみていきましょう。

●発作性上室性頻拍
 発作性上室性頻拍では、心拍数が突然150回/分程度以上に跳ね上がるという頻脈発作が起きます。脈のリズムは規則的で、ただちに命の危険はないものの、胸の苦しさやめまいを伴い、やがて手足が冷えてきて顔面蒼白になり、更にひどくなると意識が遠のいたり吐き気を催したりします。発作の持続時間は数分以内のことが多いですが、まれに1時間以上も続くことがあります。発作は自然に止まることがほとんどですが、止まらないときは、息こらえや頸動脈の圧迫をすると治まることがあります。この不整脈に効くお薬もありますし、異常な電気回路を焼き切るアブレーションという治療もあります。

●心室頻拍
 次に心室頻拍ですが、これは心室でリズムの早い電気的な興奮が起こり、脈が突然速くなる病気です。これが生じると血圧が下がり、動悸、息切れ、失神などを起こすことがあります。意識がある場合には抗不整脈薬の注射が有効なこともありますが、意識がない場合には電気ショックといった治療が必要になります。特に心筋梗塞や心筋症に関連して心室頻拍が起こり、それが数分以上続くと、より危険な心室細動に移行することがあるため、素早い処置が必要になります。  最後は先ほど出てきた心室細動についてです。

●心室細動
 心室細動は、心室の中で早くて不規則な電気のから回りが生じておこる不整脈です。原因はさまざまありますが、心室細動が起こると、心臓は小刻みに震えるだけとなり、血液を送り出すことができなくなり、心肺停止と同じ状態になります。そのため意識がなくなり、けいれんが起きることもあります。心室細動が起こったときは一刻を争って治療(電気ショック)しないと生命に関わります。AEDであれば一般の方でも使用できますし、心臓マッサージも重要な処置の一つとなります。

 

平成25年8月号

〜知って得する健康講座  第57集〜 「不整脈 その1  〜心房細動について〜」  
                         研修医 紺田 みずほ   医師 佐藤 啓  

●不整脈とは
 手首や首などに指をあてると、「ドクッドクッ」と脈を感じることができます。これは心臓が拍動するリズムが血管に伝わったものです。人間の心臓は1分間に約60〜90回拍動しています。心臓は拍動することでポンプの役割を果たし、血管を通して血液を体中に送っています。心臓の拍動は、右心房の洞結節で作られた微量の電気信号が「刺激伝導系」という経路を通って、心房から心室へと伝わることで起こります。
 不整脈とは、この「刺激伝導系」に何らかの異常が起こり、心臓の拍動が規則的なリズムからずれてしまうことを言います。

●心房細動とは
 心房細動では、右心房の洞結節以外の場所からバラバラに電気信号が出るため心房が小刻みに興奮し、心室に信号が伝わりにくく心臓のポンプ機能が弱くなることで心臓から出る血液量が少なくなります。高齢者に多く、女性より男性に多いといわれています。

●症状
 心臓から出る血液量が少なくなることで、息切れ、めまい、息苦しさといった症状が出ます。この状態が続くことで心臓に負担がかかり、心臓の機能が低下し心不全に至ることもあります。 また心房の興奮が小刻みになることで、心臓に血液が溜まりやすくなることで血の塊(血栓)ができやすくなります。その血栓が心臓から出てしまうと小さな血管に詰まってしまうため、脳の血管に詰まると脳に血液が届かなくなり脳梗塞を起こしてしまいます。

●原因
 年齢が上がるほど心房細動は起こりやすくなります。原因としては、心臓の病気(弁膜症、狭心症、心筋梗塞など)や、生活習慣(肥満、喫煙、アルコール、ストレスなど)、その他の病気(高血圧、糖尿病、甲状腺機能亢進症など)の合併があります。

●検査
  心房細動を調べる検査でよく用いられるのは心電図です。心房細動は特徴的な波形を示します(左図)。心電図の山型の波形は心臓が1回拍動したことを示し、正常であれば規則的に山形の波形が並びますが、心房細動では不規則に並びます。また、心房の興奮が小刻みになることから、山形の波形とは別に小さな波形が小刻みに並びます。
 心房細動の発作が起こっている場合は健康診断や人間ドックで受ける心電図検査(12誘導心電図と言います)でも波形が出ますが、発作が起こっていない場合は、ホルタ―心電図という24時間心臓の動きをみる心電図を使って検査します。

●治療
 心房細動の治療は大きく2つに分かれます。1つは心臓に対する治療。もう1つは血栓に対する治療です。心臓に対する治療には、心臓の拍動回数をコントロールするお薬、心臓の拍動リズムをコントロールするお薬があります。これらの薬で心臓の動きをコントロールして脈を正常にします。
 血栓に対する治療には、抗凝固薬という血液を固まりにくくサラサラにするお薬が使われます。よく使われるお薬にワーファリンがあります。血液を固まりにくくすることで、血液の塊である血栓が心臓の中にできないようにする治療です。
 この「血液サラサラのお薬」で注意しなくてはならないのは、血液が固まりにくいため、出血したら血液が止まりにくいことです。ですから、怪我をした時や出血を伴う検査を行う場合には前もって「血液サラサラのお薬」を使っているかどうか病院の職員に伝えてください。またワーファリンを飲んでいる方は納豆や青汁、クロレラを食べたり飲んだりしてはいけません。これはワーファリンの作用を邪魔するビタミンKという物質が納豆などを食べた際に作られるからです。

●最後に
 心房細動は珍しくなく、年を取るにつれて起こりやすくなる病気です。原因の1つになっている生活習慣に気をつけて、またすでに健康診断や人間ドックで心房細動が見つかった方は、病院を受診して治療を早く始められるようにしてください。


〜家庭でできるリハビリ 第15集 「肩こり体操」     リハビリテーション科 興梠 ともみ

 肩こりの原因には色々ありますが、最も多い原因として、同じ姿勢をとり続けるなどして肩や首の筋肉が緊張して硬くなり、循環障害を起こすことによって、肩こりを起こすと考えられています。
  そこで今回は、肩や首の筋肉を伸ばしたり動かしたりすることによって筋肉をほぐし、血行を良くすることで肩こりを解消・軽減させる「肩こり体操」をご紹介します。体操は立って行っても座って行っても大丈夫です。また毎日継続して行う事が大切です。痛みが強いときは無理しないでください。

@ 首まわりの体操 A 肩まわりの体操 その1
頭をゆっくりと回します。左右5〜10回。

手を組んで上にゆっくりと伸ばします。
伸ばしたら20秒止めます。3〜5回。

B 肩まわりの体操 その2 C 肩まわりの体操 その3
手を後ろで組んで胸を張るようにして手を後ろにゆっくりと伸ばし20秒止めます。3〜5回。
両肩をすくめて5〜10秒止めます。
その後肩の力を抜きます。5〜10回

D 肩まわりの体操 その4

顔は正面に向け、なるべく背すじを伸ばします。肩に指先をつけます。肘で大きく円を描くようにゆっくりと動かします。肘を後ろにもっていくときは胸を開き、肘を前にもっていくときは胸を閉じるようにします。内回し、外回し、各10回。


〜第20回そよう病院院内学会を終えて〜    学術・広報委員会 仁木 一雅

 7月6日馬見原公民館におきまして平成25年度院内学会が開催されました。 病院職員による発表が7題と阿蘇市国民健康保険 阿蘇中央病院の永吉靖央先生による特別講演「自然災害時における公的病院の役割〜H24九州北部豪雨災害を経験して〜」が行われました。

 職員による発表では 栄養科から食事の温度管理について、人工透析科からは「透析患者様に対する啓蒙活動報告」、看護科からは外来で「内視鏡を行う際の安全管理対策」、及び「病棟における業務改善に向けての取り組み」など様々な発表がありました。最優秀賞に選ばれた看護科「長期入院患者の思いを実現する為の取り組み 〜6年越しの在宅に向けて〜」では患者様を中心に家族・病院スタッフ・訪問看護・地域の力を合わせて家庭復帰・在宅看護へ向けて患者様・家族の不安を少しでも軽減できるよう様々な取り組みを行っている発表がありました。

 特別講演では昨年7月に起こった九州北部豪雨災害での公的病院の役割について講演いただきました 直接的な被害は免れたが周りの道路は寸断されスタッフの確保もままならず、町内の他の医療施設も被災し機能しなくなり患者受け入れの要請が集中するなど、当日のパニック状態の様子や被災後の避難所生活をされている方へのケアなど職種別に経験をまじえ具体的に講演していただき今後の課題など大変勉強になりました。

 

 

平成25年7月号

〜知って得する健康講座  第56集〜 「ハチ刺され」         医師 竹本 隆博

 ハチ刺されの多い時期がやってきました。例年、4月から増え始めて7月から10月にかけて多発します。ハチ刺されとはハチ類の毒針に刺されることで生じる皮膚炎であり、通常は痛みやはれなどを生じるだけですが、時に全身の症状を来し、生命に関わることもあります。

●原因 
 ミツバチ、アシナガバチ、スズメバチなどに刺された際に症状が出ます。ミツバチに刺された時は痛みや腫れは比較的軽度ですが、アシナガバチはミツバチに刺された時よりも強い痛みがあり、刺されたところは大きく赤く腫れます。重症では、じんましん、発熱、嘔吐などの症状がみられます。スズメバチはハチ刺されの中では一番怖いもので、刺されると激痛が走り広範囲に赤く腫れます。重症の場合、発熱、嘔吐、呼吸困難、肝機能障害などが起こります。急性アレルギー反応であるアナフィラキシーショックに陥ると命に関わることもあります。

●症状の現れ方 
 ハチ刺されの頻度や体質によってかなりの個人差があります。通常、刺された瞬間に疼痛を感じ発赤を生じますが、初めてのハチ刺されの場合は1〜2時間でおさまります。その後、局所が赤くはれてかゆみや痛みを伴う場合もあります。体質によっては刺された直後から全身のかゆみや息苦しさ、腹痛、気分不良などの全身症状を生じることがあり、ひどい場合は血圧が低下してショック状態になり死に至る例もあります。

●検査と診断 
 ハチに刺された状況がはっきりしている場合は容易に診断できます。ハチ毒に対するアレルギー体質をもっているかどうかは血液検査(IgE-RAST)で推定することができます。

●治療の方法
 刺された部位の発赤やかゆみには副腎皮質ステロイドの外用薬を塗ります。症状が強い場合は抗ヒスタミン薬やステロイド薬の内服、注射などを行います。ショック状態になると輸液や酸素吸入をしながらアドレナリンを注射します。アンモニア水は、ハチ刺されに効果がないだけでなく皮膚炎を引き起こすこともあるのでやめてください。

●ハチに刺された場合 
 どのハチでも、襲われたならば近くに巣があるかもしれません。まずはその場を離れましょう。秋にはハチの攻撃性が高まるのでとくに注意が必要です。安静にして刺された部位を冷やして様子を見、症状が強い場合は医師の診察を受けてください。以前にハチに刺されて激しい症状が出た人や、刺されて1時間以内に全身のかゆみ、気分不良、息苦しさなどの症状が出た場合は生命の危険がありますので直ちに救急車を呼んでください。ハチに刺されてショック症状を来す可能性が高い人は、専門医を受診してあらかじめアドレナリン自己注射薬(エピペン)を処方してもらい、常に携帯しておく必要があります。

(以前、山都広報52号に掲載したものを改編・再掲しました。)


〜家庭でできるリハビリ 第14集 「糖尿病の運動療法について」  リハビリテーション科 興梠 ともみ

 糖尿病の治療には、食事療法・薬物療法・運動療法があり、今回は運動療法についてお話します。

●運動の効果
 インスリン感受性の亢進(こうしん)、血糖管理の改善、体重減少、筋肉量増加による基礎代謝の増加など

●運動の種類】
 1)無酸素運動…100m走、筋トレ 等
 2)有酸素運動…ウォーキング、ジョギング、自転車 等

※ 糖尿病に効果があるのは、有酸素運動と言われていますが、有酸素運動と併用して筋力トレーニングを行うことで、基礎代謝の増加や筋力増強になりますので、併用して行うようにしましょう。

●ウォーキングについて
 ウォーキングの正しい姿勢について説明します。
  1)歩幅は広く
  2)着地はかかとから
  3)背筋を伸ばして姿勢良く

●運動の強度
 運動時に心拍数を目安にすると良く、糖尿病の運動時の目標心拍数は、計算で出す事が出来ます。

      ⇒ (220−年齢)×0.6〜0.8
例:60歳 ⇒ (220−60)×0.6〜0.8 = 96〜128拍

 計算で出た目標心拍数が、カロリーを消費しやすく、全身の血流循環の改善に最も良いとされ、糖尿病の患者様に適しています。 ただし、不整脈がある人や心拍数を測定するのが大変な方は、自分の体感を目安にします。「気持ちよく、楽に動ける感じ」から「汗ばんでくる」程度が良いです。

●運動時間と運動回数
 1)週に3〜5回を、数ヶ月継続

間を2日以上空けてしまうと効果が出ません。運動を開始して1ヶ月後ぐらいから効果が出るとされているので継続する事が大切です。

 2)1回の運動時間は、30分〜60分

無理はせずに徐々に時間を延長しましょう。

 3)運動開始は、食事摂取30〜60分経過後

低血糖を起こしにくく、食後の高血糖も抑えることができます。

●運動を行わない方が良い時
 1)血圧がいつもより高く、180mmHg以上の時
 2)体調が悪い時
 3)強い空腹時

※ 糖尿病の合併症(網膜症・腎症・神経症)がある人は、運動によって症状が悪化する恐れもありますので、主治医に相談して下さい。

次回は肩こり体操についてお話しします。

平成25年6月号

〜知って得する健康講座  第55集〜 「熱中症」               院長 水本 誠一

●はじめに  
 昨年の梅雨は7月12日未明からの大雨が、阿蘇・熊本市に甚大な被害を及ぼしましたが、この広報が皆さんのお手元に届く頃には平穏な日々であってほしいと願っています。これから梅雨が明ければ山都町が最も住みやすい季節になります。自然の陽光を浴びて、お仕事にスポーツに、快適な夏を楽しみたいものです。おっと、ここで注意していただきたいのが、本日お話しする「熱中症」です。

●熱中症とは
 熱中症とは、物事に集中(熱中)しておこることではありません。高温多湿となるこれからの時季に炎天下での農作業や土木作業、ビニールハウスなど熱のこもりやすい場所での作業を行うことによって発生する健康障害の総称で、次のような病型があります。

1) 熱失神 皮膚血管の拡張によって血圧が低下し、脳に流れる血液が減少しておこるもので、めまいやひどい場合には失神(意識消失)などがおこる状態です。顔面そう白となって、脈は速くて弱くなります。  
2) 熱疲労 汗を大量にかいたためにおきる脱水(体に水分が足りなくなる)による症状で、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などがみられます。
3) 熱けいれん 大量に汗をかいたときに水だけしか補給しなかったため、血液の塩分濃度が低下して、足、腕、腹部の筋肉に痛みをともなったけいれんがおこる状態です。
4) 熱射病 体温の急激な上昇によって脳の中枢機能に異常をきたした状態です。意識障害(反応が鈍い、言動がおかしい、意識がない)がおこり、処置が遅れると死亡することもあります。

まとめると、汗を大量にかいたり、体温が高くなる環境にあって、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気、けいれん、意識が遠のくなどの症状があるときは、熱中症を考えてください。

●熱中症が起きやすいのはどんな時か
 熱中症にはおきやすい時期があります。それは急に暑くなったときです。

    1. 雨の合間に突然気温が上昇した日、
    2. 梅雨明けの蒸し暑い日、
    3. 休み明けの部活動の初日などが危険とされています。

 山都町の方が梅雨明けに灼熱の熊本市に遊びに行くときも要注意ですぞ! なぜかというと、暑い環境での体温調節能力には、暑さへの慣れ(暑熱順化)が関係しているからです。私たちの体は夏の暑さに慣れるのには4〜5日かかるといわれます。ですから、急に暑くなったときは作業や運動を軽くし、暑さになれるまでの数日間は、短時間の軽いものにして徐々に増やしていくようにしましょう。

●熱中症にかかりやすい体の状態は?
 熱中症を起こしやすい人は、

    1. 力の弱い高齢者や、糖尿病・高血圧のなどの基礎疾患をお持ちの方
    2. 暑さに慣れていない方
    3. 以前熱中症をおこしたことがある方
    4. 肥満の方

 などとされています。特に高齢者の方はクーラーがない閉め切った室内でも熱中症をおこします。近所に高齢者だけのお宅がある場合には、みんなで声を掛け合って気をつけてあげたいものです。また、ふつうは元気な方でも体調が悪いと体温調節能力も低下し、熱中症につながります。二日酔い、疲労、発熱、かぜ、下痢など、体調の悪いときには無理に運動しないようにしましょう。

●熱中症の時の救急処置法
 熱中症が疑わしい場合には、医療機関を受診するのが一番ですが、まず現場でできる応急処置の3つのポイントをお教えします。

 一口で言うと、 1. 休息、2. 冷やす、3. 水分を補給させる、の3点です。

1)休息 まず、涼しいところ(木陰など)で休息させましょう、衣服をゆるめたり、脱がせたりする必要がある場合もあります。痙攣をおこしている部分がある場合はマッサージなどでほぐしても有効です。
2) 冷やす 濡れたタオルなどで冷やします。首や脇の下、足の付け根などを集中的に冷やします。うちわや扇風機で風を送ってやるのも有効です。
3)水分補給 塩分が含まれた水分を少しづつ与えます。冷やしたスポーツドリンクがあれば完璧です。
4) 救急車
を手配する
熱中症の症状が重い場合は救急車の手配が必要です。到着までは応急処置を行い、すみやかに病院での治療を行いましょう。

●熱中症の予防法  
 熱中症を起こしやすい時期や、体の状態を前述しましたので、予防法はもうおわかりかと思います。

1) 基本は、熱い時(特に急に暑くなった時や梅雨明け)には無理をしないことです。
2) それでも暑い時に活動をしなければならない時は、服装は軽装にし、素材も吸湿性や通気性のよいものにしましょう。
3) 屋外で直射日光がある場合には帽子を着用しましょう。帽子に顔や首筋を覆うものが付いているものが最適です
4) 水分補給はマメに行ないましょう。喉が渇いてから沢山水分をとるより、喉が渇く前にコマメにチョビチュビ飲むのがコツです。補給には0.1〜0.2%程度の食塩水がお薦めです。水だけの場合より、スポーツ飲料や塩を携帯したり、最近は塩キャンディ・塩飴などがあるので熱中症グッズを準備しておくのが良いでしょう。

●最後に
 かつて熱射病による死亡事故は軍隊や炭鉱、製鉄所などの労働現場で問題になりましたが、これらは活動基準や労働基準が策定されることによって現在ではほとんどなくなりました。かわって最近では青少年のスポーツによるものや、ひとり暮らしや老老介護(高齢者だけの世帯でお互いを介護する状態)の高齢者が閉めきった蒸し暑い室内にいて熱中症が起きたケースが問題となっています。前にも書きましたが、近所に高齢者だけのお宅がある場合には、みんなで声を掛け合って気をつけてあげたいものです。

(以前、山都広報53号に掲載したものを改編・再掲しました。)


〜家庭でできるリハビリ 第13集 「転倒予防について」   リハビリテーション科 興梠 ともみ

 高齢になると筋力やバランス能力の低下、反応時間の遅延などにより転倒の危険性が高くなります。そこで今回は自宅でできる、「転倒の危険性を調べるテスト」と、筋力増強・バランス能力改善を目的とした「転倒予防体操」をご紹介します。

●転倒の危険性を調べるテスト

 目を開けた状態で、片足でどのくらいの時間立っていられるか を測定します。

 ⇒ 10秒以下・・・転倒の可能性が高い

腹筋の運動
ヘソを見るように頭を上げる
背筋の運動
お尻を上げる
足の運動 @
膝を伸ばし足を20cm上げる

足の運動 A
座って膝をしっかり伸ばす
足の運動 B
椅子等につかまり踵を上げる
足の運動 C
椅子につかまり爪先を上げる

 

足の運動 D
椅子等につかまり膝を
曲げ伸ばしする
バランスの運動
椅子等につかまり片足ずつ上げる
(片足30〜60秒目安)

 運動はそれぞれ10回ずつ行います。(バランスの運動は左右の足1〜3回ずつ)

 運動は1日に1〜3回行い、週に3〜4回以上行わないと効果がでませんので、習慣的に継続して行うことが大切です。

※次回は「糖尿病の運動療法」についてご紹介します。


〜そよう病院からのお知らせ〜  

 そよう病院65周年記念誌「 先人への感謝 そしてこれからも感謝 」

 新病院オープンに伴い記念事業の一環として「そよう病院65周年記念誌」を発刊しました。山都町蘇陽・清和地区の医療の歴史、また、過去5年間の「蘇陽病院だより」の内容を一挙に掲載しており、健康についての情報も満載です。 ご入用の方は、当院総務係又は院内売店【まみはら屋】にお問い合わせください。

【掲載内容】
・ 山都町蘇陽
・清和地区の医療の歴史を振り返る
・ 知って得する健康講座
・ おいしく食べて病気予防
・ もっと知りたいクスリの話
・ みんなで覚えよう家庭介護
・ 家庭で出来るリハビリ

 

平成25年5月号

〜知って得する健康講座  第54集〜 「春はダニに注意!!」〜ダニで媒介される感染症について
                                      院長 水本 誠一

 長かった寒い季節を抜けて、山には新緑がまぶしく田圃では早苗が美しい季節になりました。野山に分け入ってゆきたい気持ちになりますね。オット、そこで注意!「ダニ」によって媒介される病気がいくつかあるのです。

●ダニにかまれて発症する病気について

  感染症 潜伏期間 主な症状 国内の
報告件数
マダニ SFTS 6日〜2週間 発熱、食欲低下、下痢、下血。
中国では致死率10数%
調査中
日本紅斑熱 2〜8日 発熱、頭痛、発疹。
死亡例あり
年間200件
ライム病 10日〜2週間 発熱、紅斑、髄膜炎、
顔面・下半身まひ
年間10件
ダニ媒介性脳炎 1〜2週間 発熱、頭痛、嘔吐、昏睡 過去1件
ケダニ ツツガムシ病 10日〜2週間 発熱、頭痛、筋肉痛。
死亡例あり
年間400件

 右表に示すように、有名なものだけでも5つほどの感染症があります。

 特に、マダニがもつ新種のウイルスが引き起こす「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染者が今年に入り国内で11例報告され、7人が死亡したというニュースを覚えている方も多いでしょう。山口県、広島県、愛媛県、長崎県、宮崎県など西日本に患者が集中して発生し、わが山都町もいつ感染者がでてもおかしくありません。このウイルスは、野山に生息するマダニについていて、かまれて感染すると、6日から2週間程度たってから、38度以上の発熱や嘔吐、腹痛、下痢などの症状が出ます。血小板や白血球の減少もみられます。ウィルスですから治療薬はなく、対症療法で回復を待つ以外になく、重症化すれば死亡する場合があるとされています。

 「日本紅斑熱」は、マダニが持つ リケッチア ジャポニカ という病原体によって発症する病気で、咬まれてから2〜10日後に倦怠感や発熱、発疹などの症状があらわれます。これは年間200例ほどみられ、熊本県では天草での発生が報告されています。これにはテトラサイクリンやニューキノロン剤といった抗生物質が有効です。

 ほかにも、ライム病(スピロヘータの一種、ボレリア菌による)、ツツガムシ病(ダニの一種であるツツガムシについたツツガムシリケッチアによる)などが有名なもので、表にまとめたように、それぞれ、ダニにかまれた後1〜2週間後に高熱が出たり、発疹がでたりする病気です。

●ダニにかまれないようにするには

 ダニは春から秋にかけて動きが活発になります。感染を予防するには、マダニにかまれないようにすることが大切です。野山に出かける時は、長袖や長ズボン、帽子を着用し、肌の露出はできるだけ少なくしましょう。ダニの侵入を防ぐため、袖口やズボンの裾はゴムで縛るなどし、首にはタオルなどを巻くなどして、すき間を作らないようにするとよいでしょう。

 ダニは皮膚を一度かむと、血を十分吸うまで数日から2週間、体から離れません。ですから野山から帰ったら、皮膚にマダニがくっついていないか、よく確かめましょう。体の大きさは2〜4ミリ程度で黒っぽい。首やわきの下、へその中など皮膚が軟らかい部分にかみつきやすいので、入浴時に特に注意深くみて、しっかり洗いましょう。

●ダニにかまれたらどうする?

 ただ、すべてのダニがウイルスなどの病原体を保有しているわけではありません。人から人へも、血液や体液を介さなければ感染しません。つまりかまれても過度に慌てる必要はありません。 かまれた場合は根元からピンセットで挟み、ゆっくり抜き取ります。かまれて1日以上たつと抜きにくくなるようです。無理に取ろうとすると、かえって病原体を広げることにもなりますので、自分で抜くのが難しければ無理せず病院を受診しましょう。

●最後に

 ダニと一口にいっても、世界で少なくとも20,000種以上が確認されているそうです。家の中の畳やじゅうたんなどのゴミに混じっている屋内ダニや、ヒゼンダニやマダニといった動物や野山に生息する屋外ダニに大きく分類されています。いずれにしても、人間よりずっと前から地球上に生息している厄介な生物のようですから、まったく排除することはできません。どうやらかまれないように努力してゆく以外にはないようです。

(出典:国立感染症研究所、岡山県環境保健センター など)


〜家庭でできるリハビリ 第12集  膝の痛み その6(運動療法) 
                             リハビリテーション科 仁木 一雅

 今回は股関節外転筋、股関節内転筋を強化する運動を紹介します。
 股関節外転筋・内転筋は骨盤と脚をつなぐ筋肉で、立っている時や歩いている時に身体を安定させる筋肉です。この筋肉が弱くなると身体が不安定になり転倒や膝関節にかかる負担が大きくなり痛みが強くなることがあります。

●横上げ運動(股関節外転筋の強化)

@ 横向きに寝て下側の脚の膝を直角になるぐらい曲げます。 A 上側の脚を伸ばしたまま少し斜め後方に持ち上げ10秒間静止します。 
10回繰り返したら反対の脚も同じように行います。

●ボールはさみ運動(股関節内転筋の強化)

@ 膝の間に20cm位のボールを入れ太ももの内側をしめるように強く挟みます。

A10秒間力をいれゆっくり力を抜きます。

 10回繰り返しましょう。

・筋肉は運動を行ってもすぐには強くなりません。
・早く治りたいからと許容範囲を超えてしまうと続けることが出来なくなります。毎日継続して行うことが大切です。
・すぐに効果が現れなくてもあきらめずに1ヶ月以上続けるようにしましょう。
・関節軟骨の修復には時間がかかります。膝痛がなくなったといっても軟骨の損傷が治ったわけではありません。
・無理をするとすぐに再発します。痛みがなくなっても運動は継続しましょう。

 

平成25年4月号

〜知って得する健康講座  第53集〜 うつ病とは     心療内科・精神科 本田和揮(益城病院)

 2002〜2003年に行われた日本での全国調査では、その1年間の中で約3%の人々が、うつ病にかかっていたと報告されています。しかし、病院で治療ではなく相談をした人でも30%割にすぎず、多くの方は病院で相談をすることもないままにされているようです。 かつて、うつ病は「心のかぜ」であると専門家たちが話していた時期がありました。それにより、うつ病という病気をいろいろな人たちに知ってもらうことができましたが、うつ病は軽い病気であると誤解されてしまったとも思われます。うつ病は決して軽い病気ではありません。放っておいたら重い症状が起こり入院することがあり、さらには死に至ることもあります。このため、最近では、うつ病は「心の肺炎」であると言われるようになっています。

 比較的簡単にチェックできる、うつ病の症状を紹介します。

 @ 「抑うつ気分」 気分の落ち込みのことです。誰でも気分が落ち込むことはありますが、普通ならば長くても数日経てば気分は良くなります。うつ病になると気分の落ち込みは数日経っても気分は良くなりません。うつ病では、2週間以上、気分の落ち込みが続くとされています。

 A 「興味や喜びの喪失」 これまで楽しめたことが楽しめなくなったり、喜ばしいはずのことが喜べなくなったりします。うつ病では、趣味である映画鑑賞を楽しめない、可愛がっているお孫さんなどに会っても嬉しくない、そのような状態が長く続きます。これもうつ病では2週間以上続くとされています。

 4月に入り、職場や学校などが変わった方が多いと思います。このような変化はとても有意義な人生おける経験となりますが、大きな負担を強いることもあり、「心の肺炎」を引き起こすことがあります。そのような時は自分ひとりで悩まずに、まず信頼できる方にご相談し、そして病院でもご相談して頂ければと思います。

※ そよう病院では下記の通り、心療内科・精神科外来を開設しています。 電話 0967-83-1122 にて予約をお願いします。

  金曜日 土曜日
午前 午後 午前 午後
第2週 そよう病院 井無田 井無田
第3週 北 部
第4週 北 部 そよう病院 井無田

 


〜家庭でできるリハビリ 第11集  膝の痛み その5(運動療法) 
                             リハビリテーション科 仁木 一雅

 今回は前回に引き続き大腿四頭筋を強化する運動を紹介します。
 大腿四頭筋は歩行時や立位時に膝関節にかかる負担を軽減する役割があり、強化する事で膝軟骨の損傷を予防し炎症を軽減させ痛みを減少させます。 前回とあわせ3種類の方法を紹介しますが膝に痛みがある方は痛みの出ない運動を選んで行ってください。

●膝伸ばし運動(大腿四頭筋の強化)

@ 脚を伸ばして床に坐り膝の下少し太もも寄りに丸めたバスタオルを入れます。
A 踵が持ち上がるように膝を伸ばします。10秒間静止してゆっくり下ろします。10回繰り返したら反対側も行います

●椅子で脚あげ運動(大腿四頭筋の強化)



@ 椅子に浅めに腰掛け手は椅子のふちを持ちます。 A 手前に上げ膝がまっすぐになるように持ち上げ10秒間静止します。
10回繰り返したら反対の脚も行いましょう。

※次回は、「横上げ運動」と「ボールはさみ運動」についてお話したいと思います。


新任医師紹介

 はじめまして。この度、4月1日付けでそよう病院に着任致しました竹本隆博と申します。これまで熊本県内の地域医療に従事した後に、国立の療養所・病院勤務を経て平成19年より五ヶ瀬町立病院に勤務しておりました。診療は全科的な疾患に対する総合医療を中心として一般外科、消化器外科、乳腺外科にも対応したいと存じます。内科疾患、外科疾患に関わらず、ご相談いただければ幸いです。
 地域の皆さんとともに健康に気をつけて頑張りたいと思っておりますので、よろしくお願い致します。


竹本 隆博


佐藤 啓

 皆さま、はじめまして。本年4月よりそよう病院で勤務させていただく事になりました佐藤 啓と申します。自治医科大学を卒業後、熊本赤十字病院で研修を受け球磨郡公立多良木病院、天草市立河浦病院を経てここ山都町にやって参りました。
 夏は渓流釣りにキャンプ、冬はトレッキングにスノーボードと仕事外の面でも楽しみです。 何かとご迷惑をおかけする事が多いかと存じますが精一杯頑張りますのでよろしくお願い致します。

 

平成25年3月号

〜知って得する健康講座  第52集〜 口腔の外傷           歯科医師 甲斐 義久

 近年、むし歯予防に対する関心が高まり、むし歯の本数は減少し、症状も軽症化してきていますが、アクシデントによる外傷によって健全な歯を失うことがたまに見受けられます。むし歯などの疾病の場合、健康な状態から発症するまである程度の時間が必要であり、その間に定期健診等で状況の把握と予防対策をとることができます。しかし事故の場合は、いったん発生してしまうと一瞬にして取り返しのつかない事態になる場合もあり、生涯にわたるQOLの維持向上に関わってくる事も考えられます。 口腔の外傷を予防していくには、日頃から自分自身で危険を予測し、危険を回避する能力を高める教育が必要であり、生活環境の点検や管理・改善を実施していくことが大切です。特に園や学校、公共施設では特に重要であると思われます。

●原因
 @人との衝突 A交通事故 B転倒 C殴打 Dスポーツでの接触・衝突 Eその他

●種類 
 @脱臼 顎骨には異常がないが歯が抜けてしまっている(完全脱臼)、抜けてはいないが、歯の位置が変わっている(不全脱臼)。
 A陥入 歯が釘を打ったみたいに歯ぐきの中にめり込んでいる。
 B破折 歯の頭もしくは根っこが割れたりヒビが入ったりしている。
 C顎骨骨折 顎の骨が折れている。
 D軟組織の損傷 唇や舌、頬の挫滅・裂傷等。

●口腔外傷の応急処置
 @近くの人に連絡する。外傷が重篤な場合、頭部や腹部におよぶ場合は救急車を呼ぶ。
 A出血がひどい場合は清潔な布もしくはティッシュ等で圧迫止血を行う。
 B歯が抜けた時は、歯を清潔に保ちながら「歯の保存液」もしくは「生理食塩水」、やむを得ない場合は「牛乳」につけて、それもなければ、乾燥しないように水でぬらしたティッシュにくるんで下さい。
 Cいずれの場合も、早急に歯科医院を受診して下さい。

 ●外傷に備えて準備しておいて欲しいもの
 ・歯の保存液
 ・生理食塩水等
 ・清潔なガーぜ
 ・タオル
 ・ゴム手袋
 ・ピンセット
 ・保冷剤
 ・歯科医や医療機関の連絡先

 最近は、スポーツ人口の増加と競技の多様化によって、スポーツによる外傷が増加しています。特にボディーコンタクトのあるスポーツでは、歯や顎骨の損傷に遭遇する可能性はきわめて高いようです。それらを予防するためにもマウスガードの装着をお薦めいたします。最後になりましたが、まだまだ、寒い日が訪れます。雪や凍結路面に注意して転倒による怪我にご注意下さい。


乳歯の歯冠破折と不全脱臼

永久歯の歯冠破折と露髄(神経の露出)

陥入した
(歯が歯ぐきの中にめり込んだ)状態

陥入した歯を整復
(元の位置に戻)した状態

〜家庭でできるリハビリ 第10集  膝の痛み その4(運動療法)
                             リハビリテーション科 仁木 一雅

 膝痛で病院にかかると「運動不足ですね」と言われることがあります。たしかに運動不足により筋力が低下し膝関節にかかる負担が大きくなると軟骨が損傷し膝痛が起こります しかしながら膝痛を治そうとして運動をすると逆に悪くなることがあります。これは膝痛が起こる前に運動不足を解消するための運動と膝痛が起こってから膝痛を治療するための運動とはまったく違うために起こります。運動不足を解消するための運動はウォーキングやランニング・水泳など全身を使うような運動です 膝痛を治療する運動は損傷した膝関節の軟骨に負担がかからないようにあまり体重をかけずに膝関節にかかる負担を和らげてくれる筋肉を強くする運動です。
 これから膝痛を和らげる運動を紹介します みなさんも時間があるときにご自宅でやってみてください。

●脚上げ運動(大腿四頭筋の強化)

@ 仰向けに寝て片方の膝を立てます
A 足首を手前に上げ膝をピンと伸ばしたまま床から20cm上げ10秒間静止します。10回繰り返したら反対の脚も行いましょう。
B 楽に出来るようになったら足首に重りをつけてレベルアップしましょう。 500g位から始めましょう。
注意点:膝が曲がると効果がありません 太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)に意識を集中し膝を伸ばすようにしましょう。

※次回は、膝伸ばし運動についてお話したいと思います。

 

平成25年2月号

〜知って得する健康講座  第51集〜 タバコの害 〜心筋梗塞〜      医師 中山 明香里

 タバコを吸うと肺がんになるというイメージは皆さんあると思いますが、実はタバコは心筋梗塞とも関わりがあるのです。

 タバコに含まれるニコチンによってカテコラミンというホルモン分泌が促進されます。カテコラミンは心拍数増加や血管収縮作用があるため、血圧が高くなり心臓に負担をかけてしまいます。すると、高血圧や動脈硬化がおこり、さらに心筋梗塞などの心臓発作を起こしやすくなるのです。1日25本〜49本タバコを吸う人が心臓発作で死亡する危険度はタバコを吸わない人の約2倍であり、本数が増えるほど死亡する危険度は高くなります。


図1 1日喫煙本数と心臓発作で死亡する危険度

 しかし、今現在タバコを吸っている方、今からでも遅くはありません。実は心臓発作に対して、禁煙は内服薬以上の効果があると言われています。禁煙して2年くらいで心筋梗塞を起こす危険度はタバコを吸う人の半分に、禁煙して5年たつとタバコを吸わない人とほぼ同じくらいまで危険度は減少します。


図2 禁煙による女性の心筋梗塞の発症危険度の低下

 禁煙はお金もかからない非常に良い予防方法なのです。心臓発作を予防し、健康な生活を送るためにぜひ禁煙を始めてみて下さい。

図1,2 出典サイト:循環器病情報サービス  


〜家庭でできるリハビリ 第9集  膝の痛み その3(変形性膝関節症の治療法)
                             リハビリテーション科 仁木 一雅

 中高年になってひざが痛くなる病気はいくつかありますが、その中で一番多いのは「変形性膝関節症」です。今回は変形性膝関節症の治療法についてお話したいと思います。

 変形性膝関節症の治療法には生活指導、物理療法、運動療法、装具療法、鎮痛剤・抗炎症剤投与(外用薬・内服薬)、ステロイド剤やヒアルロン酸などの関節内注射、過剰な関節液を抜く関節穿刺、患部の切除を行う関節鏡や人工関節置換などの手術療法があり症状の進み具合や生活スタイルによって選ぶことが出来ます。 生活指導は肥満の軽減や予防、膝に負担のかかる和式生活を減らす生活の方法を指導します。また 痛いからと言って動かさないと筋力が低下するだけでなく膝関節内への関節液の供給を低下させ関節軟骨の栄養不足・消失を招く要因となるので痛みが出ない範囲で動いてもらいます。

 物理療法は動き始めや歩き始めに痛みが出現するときはホットパックやマイクロウェーブ・超音波やレーザーなどの熱により血行を良くし関節液の供給を改善し関節の動きをスムーズにし、痛みを和らげる温熱療法を行います。また膝に水が溜まったり、動かさなくても痛いときなど急性期や炎症が強いときにはアイスマッサージなどの寒冷療法を行います。

 装具療法にはサポーターや足底板があります。サポーターは膝関節にかかる負担を軽減したり、弱くなった筋力を補うために装着します。しかしながら長期間装着していると筋力が低下し逆効果になるので痛みが軽減したらハードに動いたり歩いたりするときだけ装着し普段ははずしておきましょう。足底板はO脚になり膝関節の内側にかかりすぎる負担を和らげるために装着します。足底板は外側が高くなっており膝関節の内側にかかりすぎる体重を外側に逃がしてくれます。

 運動療法は膝関節の関節内の動きを改善する関節運動学的アプローチや膝関節にかかる負担を和らげてくれる大腿四頭筋などの筋肉を強くする筋力増強運動などを行います。 実際にはこれらの治療法を複数組み合わせながら治療を進めていきます。

 軽症 ← ← ← ← ←
→ → → → → 重症  
鎮痛薬(貼り薬、飲み薬)
手術療法
ヒアルロン酸注射
運動療法、装具療法など

※次回は、運動療法についてお話したいと思います。

平成25年1月号

〜年頭のごあいさつ〜              山都町包括医療センター そよう病院 院長 水本 誠一

 平成25年が明けました。町民の皆様は穏やかなお正月を迎えられましたでしょうか。 昨年は、久々の政権交代で何となく今年は希望が持てるのではないかとの雰囲気がありますがいかがでしょうか。

 さてこのお正月は私にとって山都町で迎える5回目のお正月でした。病院は365日24時間、医者の誰かが常駐しておかねばならず、年越しの日直当直は私が必ず行うようにしています。今年の元旦は暮れから猛威をふるう感染性腸炎(ノロウィールスなど)やそろそろ山都町でも出始めたインフルエンザなどの患者さんが多く、約30人の方が急患でこられました。早く流行が終息することを祈るばかりです。

 おかげさまで昨年11月には新病院が完成し、診療を再スタートすることができました。これまで狭くて老朽化した施設で大変ご迷惑をおかけいたしましたが、ようやく療養環境が整備されました。広くなった病院に戸惑われて、「どっちに行ったらいいかわからん」などの声も当初は聞かれましたが、すこしずつ慣れてきていただいているかと感じています。新病院は「病院らしくない病院、病める人も健康な人も集える病院」との考え方とともに、プライバシー保護の面も重視した結果、診察・処方だけの患者さん、検査などが必要な患者さん、スタッフの動線が重ならないようなつくりになっております。その反面スタッフがバタバタと歩き回る姿があまり表からは見られなくなって、患者さんも声をかけ辛くなっているかもしれません。できるだけ「目配り、気配り」をするように全職員に指導しておりますが、不行き届きの点はどうぞご指摘ください。

 また、新スタートとともに、病院名も少し変更し「山都町包括医療センター そよう病院」となっています。医療に加えて保健(健康づくり)、福祉(介護)サービスまでを総合的・一体的に提供する「地域包括医療・ケアシステム」の拠点としての活動を大きな目標の一つとしています。そこで今回、「包括医療」という文言を戴きました。町民全体の皆様がいつでも受診して頂けますという思いもこめております。また、地理的位置を示すために、漢字ではやや重たい感じのする「蘇陽」をひらがなで残しました。少々荷が重い名称ですが、「仏作って魂入れず」ではいけません。そうならないように、医療内容とサービスの充実をなおいっそう進めるように、職員一同頑張ってゆく所存です。

 皆様もお聞き及びかと思いますが、山都町の医療機関はどこでも、医師をはじめ薬剤師、レントゲン技師、看護師などの専門職が不足しています。特に医師不足は全国的に大変深刻な問題になっており、当院も常勤医師は3名でがんばっています。われわれも様々な方法で医師確保に努力していますが、これからは住民の皆様にも地元の医療機関を支える一員として、お知り合いやご親戚などのネットワークを駆使し人材をご紹介いただけたら幸甚に存じます。

 地域住民とともに山都町を住みよい郷土にしてゆくように、医療の面から頑張ってゆきますので今年もよろしくお願いいたします。


〜知って得する健康講座  第50集〜 ヒートショック現象について 〜お風呂の上手な入り方〜
                     山都町包括医療センター そよう病院   院長 水本 誠一

●はじめに
 新年明けましておめでとうございます。穏やかなお正月が過ごせましたか? さて、昨年はほぼ一年に亘ってタバコの害について解説させていただきましたが、少しでも禁煙に成功した方がいらしたならば幸いに思います。 さて、冬は寒さが厳しい山都町ですが、入浴に関連した事故で救急外来に搬入される方が毎年数人いらっしゃいます。中には突然死の状態で救急搬送され、そのまま救命できなかったケースもあります。今年はそんな悲しいことがないように、ヒートショックということについて解説し、安全なお風呂の入り方についてお話します。

●ヒートショック現象とは?
 冬の寒い時期に、暖かいリビングから浴室の脱衣所やトイレなど寒い部屋に行くと、寒さに「ゾクゾクッ」っと震えたことが ありませんか。温度変化の激しいところを移動すると、体が温度変化にさらされ血圧や脈拍が急変し、脳卒中や心筋梗塞などにつながるおそれがあります。これをヒートショック現象と言います。
 入浴前後の体(血圧)の変化を見てみましょう。

・暖かい部屋からでて寒い脱衣場に入る → 血管が収縮し血圧が上昇する
・脱衣して浴室で体を簡単に洗う → 体を動かすことにより血圧がさらに急上昇する
・浴槽につかる → 体が温まることで血管が広がり循環血液が改善され、血圧が急激に下降する。
 (「あー気持ちいい」となって、一瞬頭がジーンとすることはありませんか?これは血圧が下がって脳に行く血流が少なくなっているのかもしれません)
・風呂からあがり寒い脱衣所へ → 血圧は上昇
・服を着る → 服を着ることで体温が保たれるので血圧は下降する

 この血圧の乱高下は健康な人や若い人にとっては何でもないことのようですが、高齢者や高血圧の人には想像以上に体に負担がかかってしまい、場合によっては、不整脈や心臓停止、脳貧血、脳梗塞や脳出血が起こることがあるのです。日本の入浴中の急死者数は諸外国に比べて高いとされ、その理由は「お風呂場と浴衣室の温度差」であるとされています。

●お風呂で倒れたときの対処法
 あってはならないことですが、もしも家族が入浴中に意識を失ったところを発見したらどうしますか? あわてずに次のようなことを迅速に行いましょう。

@ 家の中に他の家族がいる場合は、大声で家族を呼び、助けを求める。
A 意識を失って風呂の中でおぼれる場合があるので、風呂の栓を抜く。
B 119番へ電話し、救急車を要請。
C 体を水中から引上げ、風呂場から出す。
D 体をタオルや毛布でくるんで、体を保温する。 
E 呼吸や脈がないようなら救急処置(胸骨圧迫、息吹き込みなど人工呼吸法)を試みる。

●ヒートショックを起こさないために】
 入浴する前に次のことを実践して、浴室でのヒートショックを防ぐようにしましょう。

@ シャワーを使用して浴槽にお湯を溜める。
 シャワーで高い位置から浴槽にお湯を溜めることで、浴室内全体を早く温めることができます。 シャワー給湯をすることによって、浴室温度が15分間で10度上昇すると言われています。
A 寒い時期は、脱衣室と浴室を十分暖かくしておく。 
 脱衣所が寒い場合は、電気ストーブなどの暖房器具などを置くだけでも かなりの効果があります。 浴槽にお湯が溜まっている場合には、風呂に入る前にしばらく浴槽のフタを開けておくことで浴室の温度を上昇させることができます。 また浴室の床にもマットやスノコを敷いておくことも有効です。
B 風呂の温度は、38度〜40度くらいの低めに。 
 入浴温度42〜43度の熱い湯は、心臓にかなりの負担がかかりとても危険です。入浴温度41度以上になると、浴室事故での死亡者が増加する傾向にあります。 38度〜40度くらいの低めのお風呂にゆっくり入るようにしましょう。できれば下半身浴からはじめ、かかり湯をしながらゆっくりと肩まで浸かりましょう。
C 高齢者や高血圧の人は一番風呂を避ける。 
 一番風呂はまだ浴室が温まっていないので、ヒートショックになりやすいとされています。目上の方を一番風呂に入れるのが日本の伝統ですが、年長者はむしろ家族が入ったあとの浴室内が温まった後に続けてすぐ入ることが理想的です。

 ついでに申し上げると、日本家屋のトイレも北側にあることが多く、ヒートショックになりやすい場所です。高齢になると、夜間トイレに行く回数も増えるのでトイレ暖房にも是非配慮をしたいものです。

●おわりに
 寒い冬は体の芯から温まるお風呂がなによりですね。しかし、せっかくのお風呂が台無しになってしまわないように、十分に気をつけて楽しみたいものです。最後に、お風呂に入るときには、家族に「ほんじゃ今から風呂に入ってくるけんね」と一声かけてください。何事も家族の対話が大切ですね。

参考:「ヒートショックの原因と対策」http://hayr51.biz/heatshock/900/


〜家庭でできるリハビリ 第8集 膝の痛み その2(変形性膝関節症) リハビリテーション科 仁木 一雅

 変形性膝関節症(関節痛・膝痛). 関節痛は、高齢になると、ほとんどの方が持っているといわれています。その関節痛の多くが、関節軟骨の磨耗が原因の変形性膝関節症です。 今回は膝関節の仕組みと働きをお話したいと思います。

●膝関節の仕組みと働き
 膝関節は大腿骨(太ももの骨)脛骨(すねの骨)膝蓋骨(膝の皿)の3つの骨が連結しています。大腿骨と脛骨の間にはクッションの役割をしている関節軟骨・半月板などがあり関節の安定性を支える十字靭帯があります。関節の周りには関節を覆っている関節包がありその中は関節液で満たされ関節が動くときの潤滑油の役割をしています。両側には内・外側副靭帯があり関節の安定性をさらに高めています。膝関節を動かす筋肉には膝を伸ばす大腿四頭筋と膝を曲げるハムストリングスがあります。これらの骨や靭帯のコントロール・筋肉の複雑な働きが統合され円滑な膝の動きが行われます。

 膝関節は蝶番のように単純に曲がったり伸びたりする関節ではありません。蝶番のように動く軸が一つではなく膝が曲がるときに回転の中心が少しづつ後方へ移動する多軸性関節です。可動性も広く歩行時には約60度しゃがむときには約120度正坐で約150度と言うように広い範囲の屈伸運動を担っています。             


正面図

※次回は、変形性膝関節症の治療法についてお話したいと思います。