〜年頭のごあいさつ〜 山都町包括医療センター そよう病院 院長 水本 誠一
平成25年が明けました。町民の皆様は穏やかなお正月を迎えられましたでしょうか。 昨年は、久々の政権交代で何となく今年は希望が持てるのではないかとの雰囲気がありますがいかがでしょうか。
さてこのお正月は私にとって山都町で迎える5回目のお正月でした。病院は365日24時間、医者の誰かが常駐しておかねばならず、年越しの日直当直は私が必ず行うようにしています。今年の元旦は暮れから猛威をふるう感染性腸炎(ノロウィールスなど)やそろそろ山都町でも出始めたインフルエンザなどの患者さんが多く、約30人の方が急患でこられました。早く流行が終息することを祈るばかりです。
おかげさまで昨年11月には新病院が完成し、診療を再スタートすることができました。これまで狭くて老朽化した施設で大変ご迷惑をおかけいたしましたが、ようやく療養環境が整備されました。広くなった病院に戸惑われて、「どっちに行ったらいいかわからん」などの声も当初は聞かれましたが、すこしずつ慣れてきていただいているかと感じています。新病院は「病院らしくない病院、病める人も健康な人も集える病院」との考え方とともに、プライバシー保護の面も重視した結果、診察・処方だけの患者さん、検査などが必要な患者さん、スタッフの動線が重ならないようなつくりになっております。その反面スタッフがバタバタと歩き回る姿があまり表からは見られなくなって、患者さんも声をかけ辛くなっているかもしれません。できるだけ「目配り、気配り」をするように全職員に指導しておりますが、不行き届きの点はどうぞご指摘ください。
また、新スタートとともに、病院名も少し変更し「山都町包括医療センター そよう病院」となっています。医療に加えて保健(健康づくり)、福祉(介護)サービスまでを総合的・一体的に提供する「地域包括医療・ケアシステム」の拠点としての活動を大きな目標の一つとしています。そこで今回、「包括医療」という文言を戴きました。町民全体の皆様がいつでも受診して頂けますという思いもこめております。また、地理的位置を示すために、漢字ではやや重たい感じのする「蘇陽」をひらがなで残しました。少々荷が重い名称ですが、「仏作って魂入れず」ではいけません。そうならないように、医療内容とサービスの充実をなおいっそう進めるように、職員一同頑張ってゆく所存です。
皆様もお聞き及びかと思いますが、山都町の医療機関はどこでも、医師をはじめ薬剤師、レントゲン技師、看護師などの専門職が不足しています。特に医師不足は全国的に大変深刻な問題になっており、当院も常勤医師は3名でがんばっています。われわれも様々な方法で医師確保に努力していますが、これからは住民の皆様にも地元の医療機関を支える一員として、お知り合いやご親戚などのネットワークを駆使し人材をご紹介いただけたら幸甚に存じます。
地域住民とともに山都町を住みよい郷土にしてゆくように、医療の面から頑張ってゆきますので今年もよろしくお願いいたします。
〜知って得する健康講座 第50集〜 ヒートショック現象について 〜お風呂の上手な入り方〜
山都町包括医療センター そよう病院 院長 水本 誠一
●はじめに
新年明けましておめでとうございます。穏やかなお正月が過ごせましたか? さて、昨年はほぼ一年に亘ってタバコの害について解説させていただきましたが、少しでも禁煙に成功した方がいらしたならば幸いに思います。 さて、冬は寒さが厳しい山都町ですが、入浴に関連した事故で救急外来に搬入される方が毎年数人いらっしゃいます。中には突然死の状態で救急搬送され、そのまま救命できなかったケースもあります。今年はそんな悲しいことがないように、ヒートショックということについて解説し、安全なお風呂の入り方についてお話します。
●ヒートショック現象とは?
冬の寒い時期に、暖かいリビングから浴室の脱衣所やトイレなど寒い部屋に行くと、寒さに「ゾクゾクッ」っと震えたことが ありませんか。温度変化の激しいところを移動すると、体が温度変化にさらされ血圧や脈拍が急変し、脳卒中や心筋梗塞などにつながるおそれがあります。これをヒートショック現象と言います。
入浴前後の体(血圧)の変化を見てみましょう。
・暖かい部屋からでて寒い脱衣場に入る → 血管が収縮し血圧が上昇する
・脱衣して浴室で体を簡単に洗う → 体を動かすことにより血圧がさらに急上昇する
・浴槽につかる → 体が温まることで血管が広がり循環血液が改善され、血圧が急激に下降する。
(「あー気持ちいい」となって、一瞬頭がジーンとすることはありませんか?これは血圧が下がって脳に行く血流が少なくなっているのかもしれません)
・風呂からあがり寒い脱衣所へ → 血圧は上昇
・服を着る → 服を着ることで体温が保たれるので血圧は下降する
この血圧の乱高下は健康な人や若い人にとっては何でもないことのようですが、高齢者や高血圧の人には想像以上に体に負担がかかってしまい、場合によっては、不整脈や心臓停止、脳貧血、脳梗塞や脳出血が起こることがあるのです。日本の入浴中の急死者数は諸外国に比べて高いとされ、その理由は「お風呂場と浴衣室の温度差」であるとされています。
●お風呂で倒れたときの対処法
あってはならないことですが、もしも家族が入浴中に意識を失ったところを発見したらどうしますか? あわてずに次のようなことを迅速に行いましょう。
@ 家の中に他の家族がいる場合は、大声で家族を呼び、助けを求める。
A 意識を失って風呂の中でおぼれる場合があるので、風呂の栓を抜く。
B 119番へ電話し、救急車を要請。
C 体を水中から引上げ、風呂場から出す。
D 体をタオルや毛布でくるんで、体を保温する。
E 呼吸や脈がないようなら救急処置(胸骨圧迫、息吹き込みなど人工呼吸法)を試みる。
●ヒートショックを起こさないために】
入浴する前に次のことを実践して、浴室でのヒートショックを防ぐようにしましょう。
@ シャワーを使用して浴槽にお湯を溜める。
シャワーで高い位置から浴槽にお湯を溜めることで、浴室内全体を早く温めることができます。 シャワー給湯をすることによって、浴室温度が15分間で10度上昇すると言われています。
A 寒い時期は、脱衣室と浴室を十分暖かくしておく。
脱衣所が寒い場合は、電気ストーブなどの暖房器具などを置くだけでも かなりの効果があります。 浴槽にお湯が溜まっている場合には、風呂に入る前にしばらく浴槽のフタを開けておくことで浴室の温度を上昇させることができます。 また浴室の床にもマットやスノコを敷いておくことも有効です。
B 風呂の温度は、38度〜40度くらいの低めに。
入浴温度42〜43度の熱い湯は、心臓にかなりの負担がかかりとても危険です。入浴温度41度以上になると、浴室事故での死亡者が増加する傾向にあります。 38度〜40度くらいの低めのお風呂にゆっくり入るようにしましょう。できれば下半身浴からはじめ、かかり湯をしながらゆっくりと肩まで浸かりましょう。
C 高齢者や高血圧の人は一番風呂を避ける。
一番風呂はまだ浴室が温まっていないので、ヒートショックになりやすいとされています。目上の方を一番風呂に入れるのが日本の伝統ですが、年長者はむしろ家族が入ったあとの浴室内が温まった後に続けてすぐ入ることが理想的です。
ついでに申し上げると、日本家屋のトイレも北側にあることが多く、ヒートショックになりやすい場所です。高齢になると、夜間トイレに行く回数も増えるのでトイレ暖房にも是非配慮をしたいものです。
●おわりに
寒い冬は体の芯から温まるお風呂がなによりですね。しかし、せっかくのお風呂が台無しになってしまわないように、十分に気をつけて楽しみたいものです。最後に、お風呂に入るときには、家族に「ほんじゃ今から風呂に入ってくるけんね」と一声かけてください。何事も家族の対話が大切ですね。
参考:「ヒートショックの原因と対策」http://hayr51.biz/heatshock/900/
〜家庭でできるリハビリ 第8集〜 膝の痛み その2(変形性膝関節症) リハビリテーション科 仁木 一雅
変形性膝関節症(関節痛・膝痛). 関節痛は、高齢になると、ほとんどの方が持っているといわれています。その関節痛の多くが、関節軟骨の磨耗が原因の変形性膝関節症です。 今回は膝関節の仕組みと働きをお話したいと思います。
●膝関節の仕組みと働き
膝関節は大腿骨(太ももの骨)脛骨(すねの骨)膝蓋骨(膝の皿)の3つの骨が連結しています。大腿骨と脛骨の間にはクッションの役割をしている関節軟骨・半月板などがあり関節の安定性を支える十字靭帯があります。関節の周りには関節を覆っている関節包がありその中は関節液で満たされ関節が動くときの潤滑油の役割をしています。両側には内・外側副靭帯があり関節の安定性をさらに高めています。膝関節を動かす筋肉には膝を伸ばす大腿四頭筋と膝を曲げるハムストリングスがあります。これらの骨や靭帯のコントロール・筋肉の複雑な働きが統合され円滑な膝の動きが行われます。
膝関節は蝶番のように単純に曲がったり伸びたりする関節ではありません。蝶番のように動く軸が一つではなく膝が曲がるときに回転の中心が少しづつ後方へ移動する多軸性関節です。可動性も広く歩行時には約60度しゃがむときには約120度正坐で約150度と言うように広い範囲の屈伸運動を担っています。

正面図
※次回は、変形性膝関節症の治療法についてお話したいと思います。