平成24年1月号

〜年頭のごあいさつ〜              山都町立蘇陽病院 院長 水本 誠一

 平成24年が明けました。町民の皆様は穏やかなお正月を迎えられましたでしょうか。昨年は、世界中でいろいろな難しく悲しい出来事がたくさんありました。とりわけ日本ではまさかと思われるような人命に関わる大災害大事故がおきてしまいました。我々は東北のかたがたに末永く心を寄せ、支えてゆく活動が必要ですし、日本人の中に絆と連帯感の重要性が再確認された年でもありました。そんな中、山都町立蘇陽病院のスタッフも旧年にもまして、皆さまから信頼される病院となるよう努力する決意を新たにし、新鮮な気持ちでスタートを切ったところでございます。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 さて、私が赴任して4年が経過しますが、この間「地域に親しまれる病院」を目指し、へき地医療と救急医療を基本とした地域包括医療の充実に邁進してまいりました。そして皆様のご理解とご支援を頂き、念願であった新病院の建て替えを昨年9月に着工することができました。工事は順調に進み、現在は基礎から1階部分のコンクリート工事を行っています。甲斐町長が描いておられる「病院らしくない病院」「老いも若いも、病人も健康な人も集える病院」が今年の秋口には完成するものと思われます。しかし、「仏作って魂入れず」ではいけません。そうならないように、医療内容とサービスの充実をなおいっそう進めるように、職員一同頑張ってゆく所存です。

 皆様もお聞き及びかと思いますが、山都町の医療機関はどこでも、医師をはじめ薬剤師、レントゲン技師、看護師などの専門職が不足しています。特に医師不足は全国的に大変深刻な問題になっています。われわれも様々な方法でスタッフを集めていますが、これからは住民の皆様にも地元の医療機関を支える一員として、お知り合いやご親戚などのネットワークを駆使し人材をご紹介いただけたら幸甚に存じます。

 地域住民とともに山都町を住みよい郷土にしてゆくように、医療の面から頑張ってゆきますので今年もよろしくお願いいたします。


〜知って得する健康講座  第39集〜「食道がん」外科手術と放射線治療について     医師 末綱 靖

 今回は食道癌の治療についてお話したいと思います。食道癌も他の癌と同様、各種検査の結果を総合的に評価して、癌の進展度や全身状態から治療法を決めます。食道癌の治療には大きく分けて、4つの治療法があります。それは、内視鏡治療、手術、放射線治療と抗癌剤の治療です。その他に温熱療法や免疫療法などを行っている施設もあります。早期癌に対しては内視鏡治療が広く行われており、またある程度進行した癌では、外科療法、放射線療法、化学療法を組み合わせてこれらの特徴を生かした集学的治療が行われます。

●外科療法
 手術は身体から癌を切り取ってしまう方法で、食道癌に対する最も一般的な治療法です。手術では癌を含め食道を切除します。同時にリンパ節を含む周囲の組織を切除します(リンパ節郭清)。食道を切除した後には食物の通る新しい道を再建します。食道は頸部、胸部、腹部にわたっていて、それぞれの部位により癌の進行の状況が異なっているので、癌の発生部位によって選択される手術術式が異なります。

(1)頸部食道癌
 癌が小さく頸部の食道にとどまり、周囲への癌の広がりもない場合は、のどと胸の間の頸部食道のみを切除します。切除した食道の代わりに小腸の一部(約10cm)を移植して再建します。なお、移植腸管は血管を頸部の血管とつなぎ合わせることが必要です。のどの近くまで広がった癌では頸部食道とともに喉頭を切除し、小腸の一部を咽頭と胸部食道の間に移植します。そして気管の入口を頸部の最下端中央につくります。喉頭を切除するため声が出せなくなります。

(2)胸部食道癌
 原則的に胸部食道を全部切除します。同時に胸部のリンパ節を切除します。胸の中にある食道を切除するために、右側の胸を開きます。最近では胸腔鏡を使って開胸せずに食道を切除する方法も試みられていますが、その有効性はまだ検討段階です。開胸を行わずに頸部と腹部を切開し食道を引き抜く術式(食道抜去術)もあります。この術式では食道の周囲のリンパ節を切除できません。食道を切除した後、胃を引き上げて残っている食道とつなぎ、食物の通る道を再建します。胃が使えないときには大腸または小腸を使います。胃や大腸・小腸を引き上げる経路により、前胸部の皮膚の下を通す方法・胸骨の下で心臓の前を通す方法・もとの食道のあった心臓の後ろを通す方法の3とおりがあり、それぞれの病態により選択されます。

(3)腹部食道癌
 腹部食道の癌に対しては、左側を開胸して食道の下部と胃の噴門部を切除します。左側の開胸による手術は胸部・下部食道癌で肺機能の悪い人にも行われます。

(4)バイパス手術
 癌のある食道をそのまま残して食物の経路を別につくる手術です。胃を頸部まで引き上げ、頸部で頸部食道とつなぐ方法です。この手術は根治をあきらめ、一時的にでも食べられるようにとQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の向上をめざしたものです。

外科療法の合併症
 手術に続いて発生する余病(合併症)は肺炎、縫合不全(つなぎめのほころび)、肝・腎・心障害です。これらの合併症が死につながる率、すなわち手術死亡率(手術後1ヵ月以内に死亡する割合)は2〜3%です。これらの発生率は、手術前に他の臓器に障害をもっている人では高くなります。

●放射線療法
 放射線療法は手術と同様に限られた範囲のみを治療できる局所治療ですが、機能や形態を温存することをめざした治療です。高エネルギーのX線などの放射線を当てて癌細胞を殺します。放射線療法には2つの方法があります。放射線を身体の外から照射する方法(外照射)と、食道の腔内に放射線が出る物質を挿入し身体の中から照射する方法(腔内照射)です。また、放射線療法は治療の目的により大きく2つに分けられます。癌を治してしまおうと努力する治療(根治治療)と、癌による痛み、出血などの症状を抑えようとする治療(姑息治療、対症治療)です。

(1)根治治療
 根治治療の対象は、癌の広がり方が放射線を当てられる範囲にとどまっている場合です。根治治療の放射線療法は、外照射だけを週5日6〜7週続けるやり方と、外照射5〜6週に2〜3回の腔内照射を組み合わせるやり方があります。最近、放射線療法と抗がん剤治療を同時に行うほうが放射線療法だけを行うより効果があることがわかってきました。放射線療法に抗がん剤治療を加えることで手術をしなくても治る患者さんが増えたという報告もあります。治すことをめざして治療をする場合は、放射線療法と抗がん剤治療を同時に行うことが勧められます。

(2)姑息治療
 姑息治療は骨への転移による痛み、脳への転移による神経症状、リンパ節転移の気管狭窄による息苦しさ、血痰などを改善するために行われます。症状を和らげるために放射線は役に立ちます。症状がよくなれば目的は達成されるので、根治治療のように長い期間治療しません。2〜4週くらいの治療です。


〜もっと知りたいクスリの話 第11集〜 血液をサラサラにする薬について
                       薬剤科 奥村 真利子     監修 院長 水本 誠一 

 動脈硬化などが原因で血管が傷つくと、傷ついたところに血栓(血のかたまり)ができて、血管をつまらせたり血管からはがれて血管をふさいだりします。また、血のめぐり(ながれ)がわるくなると血栓ができやすくなります。そこで、血栓の治療や予防のために「血液をサラサラにする薬」が用いられます。

 血液をサラサラにする薬は、「抗血小板薬」と「抗凝固薬」の2つのタイプがあり症状によって使い分けられています。

●抗血小板薬(代表的な薬:バイアスピリン錠、プラビックス錠、パナルジン錠など)

●抗凝固薬(代表的な薬:ワーファリン錠など)

「血液をサラサラにする薬」には

・出血しやすい、または出血したとき止まりにくいという副作用(鼻血、歯ぐきからの出血、皮膚の内出血など)があります。

・検査や手術、抜歯をする場合には、出血を防ぐために薬を服用しない期間が必要になる場合があります。 このような場合には、必ず主治医に伝えてください。

ワーファリンを服用する時に注意すること

・薬との飲みあわせで、効果が強く現れたり弱まったりして、期待した効果が得られないことがあります。主治医以外の医師を受診するときや、薬局で薬を買うときは、必ずワーファリンを服用していることを伝えてください。

・主治医は、ワーファリンの効果をみるために血液検査をして服用量を決めます。指示通りに服用しないと正しい服用量が決められません。必ず指示通りに服用してください。

・納豆・青汁・クロレラは、ワーファリンの効果を無くしますので、絶対に食べないでください。緑黄色野菜はとくに制限しなくてもよいのですが、一時的に大量に摂取することは避けてください。

・歯ブラシは柔らかめのものを使い、ひげ剃りには電気カミソリを使われることをおすすめします。また、けがなどをしないように注意してください。