〜知って得する健康講座 第29集〜 Hib(ヒブ)ワクチンについて 医師 米山 哲司
●はじめに
これから寒さが身にしみる季節になりますが、風邪に似た症状で実は大変重大な病気"髄膜炎"という病気を皆さんはご存知でしょうか?小さなお子さんがおられるお母さんは良く知っているのではないかと思います。今回は、髄膜炎とその予防手段であるHib(ヒブ)ワクチンに関するお話です。
●髄膜炎とは
何らかのきっかけでウイルスや細菌などが脳を覆う髄膜に入り込み炎症を起こす疾病です。新生児や乳児に多くみられますが、成人でも起こります。主に無菌性(ウイルスによる)髄膜炎と細菌性髄膜炎に分類されます。
●髄膜炎の症状
初期症状が発熱、嘔吐、下痢、頭痛等です。風邪や急性胃腸炎等のありふれた疾患との鑑別が非常に難しく、症状がひとつのみといった症例も稀ではありません。また、ゼロ歳児の場合は初めての発熱というケースも多いため、小児科の先生ですらも初期の段階で髄膜炎との診断を下すことは容易ではないといわれています。
●髄膜炎の予後
細菌性髄膜炎は無菌性髄膜炎よりも重篤です。細菌性髄膜炎の場合は急速に悪化することがあり、「一晩様子を見ましょう」と帰宅させた患児が、その夜には救急搬送されるという事態になる可能性もあります。無菌性髄膜炎が1週間ぐらいで治癒し、後遺症も殆んどみられないのに対し、細菌性髄膜炎は死亡率(約30%)も高く、後遺症(知能障害やてんかんなど)も20〜30%にみられます。いかに早く診断し、治療するかにかかっているわけですが、皆さんはこの髄膜炎を予防できるワクチンがあることをご存知でしょうか?
●細菌性髄膜炎の原因菌とHib(ヒブ)ワクチン
原因菌は大半がb型ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Hib:ヒブ、インフルエンザウイルスではありません)で、次いで肺炎球菌の順となっています。Hib(ヒブ)による髄膜炎は5歳以下、特に生後3ヶ月から2歳くらいまでがかかりやすく、日本の年間患者数は少なくとも600人と報告されています。このうち約30人が死亡し、150人に知的障害や癲癇(てんかん)などの後遺症が残ると報告されております。
そのため、これらの菌に感染しない対策があれば髄膜炎に感染する危険性は減ると考えられます。ところが、日本以外の先進国では20年以前よりその対策がなされていたのです。それが今回の本題である"Hib(ヒブ)ワクチンの接種なのです。"
●Hib(ヒブ)ワクチンの経緯
1980年代に欧米を中心にHibワクチンが導入されました。以降、米国では定期予防接種で髄膜炎の罹患率が100分の1にまで減少するという結果が報告されるようになり、1998年に世界保健機構(WHO)が Hibワクチンの乳児への定期接種を推奨する声明を出すまでになりました。現在では世界100カ国以上で使用され、世界的に見ればHib感染症はまれな疾患になりつつあるといえます。
ところが日本はどうでしょうか?驚いたことに、つい最近まで日本は先進国唯一のHibワクチン未承認国であったのです。
日本での経緯
日本では、2000年にHibワクチンの国内臨床試験が開始。2005年6月に日本小児科学会が厚労省にHibワクチンの要望書を提出し、早期承認を求める動きがありました。2007年ワクチンが承認され、2008年に販売に至っております。
●Hibワクチンの課題
しかし、日本では任意接種であり、自己負担が大きく、そして一部の自治体を除いて助成制度も整っていないことから、あまり普及していないのが現状です。また接種に対する啓蒙が不十分であったことも拍車をかけていたように思われます。
今後の期待
Hibワクチンの早期の定期接種化は、細菌性髄膜炎罹患を減少させ、子供を守り、親の不安を取り除き、そして小児科医の負担軽減にもつながっていくと考えられます。国・自治体・国民の働きかけにより、予防接種法が見直され、定期接種に移行されることを切望している次第であります。
● さいごに
今回はHibワクチンについて接種時期、方法、や費用などのお話することができませんでした。もしその詳細を知りたいと思われましたら、最寄りの小児科医院にご相談することをお勧めします。
〜おいしく食べて、病気予防 第7集〜 減塩食(その2)
栄養科主任調理師
(給食用特殊料理専門調理師)
園田 由里子 監修 院長 水本 誠一
前回の減塩食に引き続き、塩分について書かせて頂きます。 まず、クイズです。塩分量は、どちらが多いと思われますか?
@薄口醤油10cc と 濃口醤油10cc
A赤みそ10g と 白みそ10g
B大根ぬかみそ漬10g と たくあん10g
C梅塩漬10g と 梅干10g
答えは最後に。
家庭でよく食べられるインスタントのカップ麺について、私なりに、どのくらい塩分が入っているか調べてみました。
1個のカップ麺に塩分が5.3グラムから5.8グラム入っていることがわかりました。中には7.1グラムも入っているという驚きのものもありました。ですが、汁を全部飲みほさなければ、1グラムから2グラム程度の塩分量ですむということです。一日にとる塩分量は、10グラム以下が理想的と言われている現実からすれば、工夫の一つとして考え実行してみてはいかがでしょう。
私は病院の調理師として勤務して2年半になりますが、患者の方で脳梗塞や高血圧・心臓病・腎臓病などの病気から塩分を制限しなければいけない人がたくさんいることに驚きました。塩分については、病院に勤務する以前から大変関心があり気をつけてはいたのですが、病院で患者様の食事作りを担当してみると、目分量のいい加減さがわかりました。更に、正確に調味料を計量して調理する、あるいは塩分を制限することが、いかに治療の一端につながっているかということを痛感しています。計量が面倒と言われる方は普段使われる食器などで一度、塩・みそ・しょうゆなど計ってみられてはいかがでしょうか。
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計量風景 |
調べてみてわかったのですが、作られた市販の物より、時間がかかっても手作りの方が塩分量は少なくできます。また、市販の物で塩分が多い物は、一日あるいは一回に食べる量を決めて食べるようにしてはいかがでしょうか。塩分量を減らすということは、脳梗塞・脳卒中・心筋梗塞等の病気予防にもつながります。気をつけてみてはいかがでしょう。
(クイズの回答) @薄口醤油 A赤みそ Bたくあん C梅干
〜みんなで覚えよう家庭介護 第10集〜 褥創予防 徐圧
訪問看護ステーション主任 興梠美鈴
看護師 下間夏美
●褥創とはなんでしょうか?
私達は眠っている時、無意識のうちに寝返りを打つことで体重が一定の場所に長時間かかるのを防いでいます。自分で寝返りを打てないと、体の同じ部分に体重がかかり "血のめぐり"が悪くなり皮膚やその下にある組織が死んでしまいます。
●褥創の出来やすい部分はどこでしょうか?
骨の突出している部分に出来ます。自分の手を寝ている方の体の下にいれてみると体圧を感じる事が
出来ます。
●圧迫やずれを取り除く方法は?
褥創を予防するためには体位変換(体の向きや姿勢を変えること)をしたり、体圧分散寝具を用いたりして皮膚にかかる圧を分散しましょう。
● | ベッドで過ごす場合 |
・ | 上向き、左右の横向きが交互になるように2〜3時間ごとに変えます。 横向きになる場合は体の向きが30度位になるように調整しましょう。 |
・ | 楽な姿勢を保ち圧迫やずれが緩和できるよう枕やクッションを用いましょう。 |
・ | 背あげを行う場合30度以下になるようにしてその際、寝巻きやシーツのしわが皮膚を圧迫することがないように体を浮かせ、皮膚にかかる力がかからないようにしわを伸ばしましょう。 |
● | 座って過ごす場合 |
・ | 姿勢がずれないよう股関節、ひざ、くるぶしが各々90度になるように座りましょう。 |
・ | 円座の使用は避けましょう。姿勢が不安定になり円座に接する皮膚に圧迫がかかります。 |
体圧分散寝具はウレタンマットレス、エアーマットレス等色々な種類がありますので状態にあわせて活用しましょう。
※ 詳しくは保健師、ケアマネージャーにご相談ください。