平成21年12月号

〜院長コラム〜 蘇陽病院の正式名称について 〜国民皆保険制度と国保直診病院の役割〜  病院長 水本 誠一

 早いもので今年も残すところ一月ちょっととなり、冬仕度を急がなければならない時候となりました。急に寒くなるこの時期は血圧もあがりやすいので、自宅でも血圧を測るなど、健康管理には十分に気を配ってください。

 さて、いつもこの「広報やまと」の紙面をお騒がせしている蘇陽病院ですが、正式な名前をご存知でしょうか。少々長い名前ですが正式には「山都町立国民健康保険蘇陽病院」といいます。「山都町立」はわかりますが、その後の「国民健康保険」とはなんでしょうか。国民健康保険に加入している人だけしか来てはいけない病院の事? いいえ、何の保険でもいつでも受診できる病院です。今回はこの「国民健康保険」の意味について書いてみます。

 太平洋戦争の焦土の記憶が残る昭和36年に、わが国の国民皆保険制度は完成しました。サラリーマンなどが加入する社会保険(社保)、公務員が加入する共済保険とともに、農民などの自営業者などが加入する国民健康保険(国保)がその根幹をなしています。世界のほとんどの先進国では何らかの国民皆保険制度を有していることが普通ですが、その中でも日本の制度は最も完成度が高く世界に誇れる仕組みでもあります。ところが、アメリカ合衆国はなんと国民皆保険制度がないのです!! オバマ大統領はこれを今から作ろうとしていますが難航しているようです。

 昭和36年当時国民から広く保険料を徴収するにあたって、日本国中に“容易に病院にかかれない地域”がたくさんありました。その住民から、病院もないのになぜ保険料を同じように払わなければならないかと不満が噴出しました。そこで、国保は民間医療機関の進出が期待できない僻地にもいつでもかかれる病院を作ることに邁進しました。この理念で設立された病院を「国民健康保険診療施設(国保直診)病院」といいます。蘇陽病院は昭和22年から馬見原の地に当時の6ヶ町立病院として設立され、その後“国保直診”と位置づけされています。熊本県には、国保直診病院は蘇陽病院を含め12あります。

 したがって我々の蘇陽病院は馬見原という山都町の一角だけのためでなく、大きく言えば日本全体の医療制度、国民皆保険制度を支える病院であるともいえます。また、国保直診は医療機関として医療サービスを提供することは当然ですが、医療に加えて保健(健康づくり)、福祉(介護)サービスまでを総合的、一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の拠点として活動することをも目標としています。

 以上のように、蘇陽病院は今も昔も医療資源に乏しい“九州のへそ”を支える医療機関としての大きな任務を背負っています。もちろん毎年国民保険からは年間500万円程の補助金をいただきながらの運営でもあります。考えてみれば大変大きな任務であると思いますし、それにふさわしい働きができているか常に自己反省しながらの病院経営に努めています。どうぞ皆様のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。


〜知って得する健康講座 第18集〜  肺炎球菌ワクチンについて      医師 井野 裕治

  皆さん、こんにちは。寒くなり風邪、肺炎が流行りやすい時期となりましたがいかがお過ごしでしょうか?今回はインフルエンザと同じように肺炎にも予防ワクチンがありますので、それにについてお知らせしようと思います。

 肺炎球菌ワクチン『ニューモバックス』は、2歳以上の方なら誰でも接種していただけるワクチンです。 ですが、お勧めする対象は(肺炎死亡率が急激に高くなる)65歳以上の方、免疫能の落ちている糖尿病や心不全・腎不全・呼吸器疾患をお持ちの方です。

 肺炎は、現在日本での死亡原因第4位の疾患です。 このワクチンは、全ての肺炎にかからなくするワクチンではありませんが、肺炎にかかりにくくし、かかった場合でも重症化を防ぐ効果が期待できます。 インフルエンザのワクチンとは違い毎年接種していただく必要はなく、一度接種していただくと5年ほど効果があります。 今までは生涯に一度しか打てなかったワクチンですが、10月19日より、再接種が認められたことも含めて三つの改訂ポイントがあります。

1. 初めての接種から5年以上経過していれば二度目の接種も可能になりました。
2. 接種不適当者の項から「放射線・免疫抑制剤等による治療を受けている方、その予定がある方」が外れました。
3. インフルエンザなど、他のワクチンを接種する場合6日以上あけていただく必要がありましたが、医師の判断で同時接種も可能になりました 。

 免疫能の高い時に接種していただくとより長く抗体価が持続しますので、65歳以上の早い段階で接種していただくと、より長く効果が持続することが期待できます。 ・ 脾臓を摘出された方以外は、全額自己負担のワクチンです(蘇陽病院では6300円です)。

 熊本県では初の公費助成が10月から玉東町でおこなわれています。現在、全国では173の市区町村で助成実施、今後も増えていく予定です。山都町でも早く公費負担が実現するといいですね。 というのも、肺炎にかかった場合の治療費用は約25万円/1人。2000円の公費補助を100人の方に行ったとしてもその内1人でも肺炎を防げれば費用は安く済むわけですね。

 公費助成のあるところで接種した方々にアンケートを行ったところ1/3以上の方が「風邪をひきにくくなった」や「安心して外出できるようになった」と回答されました。 特殊なワクチンではなく、接種の仕方などはインフルエンザワクチンと同じと考えてください(注射後赤くなったり腫れたりする場合もあります)。

 ※ただし 現在、ワクチンの製造が接種希望者数に追いつかない状況で品薄の状態です。最寄りの医療機関にお問い合せいただき予約が必要です。


〜蘇陽病院内見て歩き〜  緑川へき地診療所の紹介              副院長 大城 一

 今回は蘇陽病院が診療を行なっている3つの診療所の中の一つ、緑川診療所についてご紹介をさせていただきます。

 緑川診療所は旧清和村の緑川源流近くにある小さな診療所で、毎週月曜日の午後から診察を行っております。源流ならではのきれいな水と自然に囲まれた のどかな場所で、時折鹿を見かけることもあります。山深い場所で夏場は馬見原よりもさらに涼しく、冬はかなり雪が積もります。今年は2回目のトレイルマラソンが行なわれ、大盛況であったようです。

 こちらには30数名の患者様が受診されますが、もちろん高価な検査機器はありませんので、定期処方、注射、採血などを行ない、必要な場合は病院へ来ていただきます。高度な医療ができる訳ではありませんが、高齢者も多く、交通の便が悪い地域ですので、僻地の医療面での不利益を少しでも解消できればと考えております。土地柄もあるのか、皆さん陽気で楽しく、待合室はいつも笑い声であふれており、緑川に訪れるのを毎週楽しみにしております。

 


〜お知らせ〜

本院ではメタボリック症候群治療の観点から毎月第三水曜日午後に『ダイエット外来』診療を行ってまいりましたが、平成22年より休止することとなりました。これまで診療にかかられた患者様は引き続き常勤医にて対応致しますので何卒宜しくお願い致します。

 

平成21年11月号

〜院長コラム〜 共感しあいながらの医療 〜稲刈りを体験して〜         病院長 水本 誠一

 10月も終盤に近づき、栗拾いや稲刈りも終え紅葉も間近になってきました。皆さん、今年の作柄はいかがでしたでしょうか。2年続けて台風が来なかったので、順調であったのではないかと推察いたします。さて前回(9月号)は地域で医療を担ってゆくにあたっての私の“こだわり”の一つ、「地域づくりへの参加」をお話しいたしましたが、今回はもう一つの私の“こだわり”をお話します。

 それは、「その地域の患者さんを診察・治療をするならば、その地域の皆さんの生活を理解=体験するべきである」という思いです。 私の患者さん(特に女性)には腰が「くの字」に曲がって、腰が痛い方がたくさんいらっしゃいます。寝るときも背骨が当たって仰向きになれず横向きでしか寝られません。足の痺れや痛みなどの「神経痛」を訴えられ、毎回腰に注射をされたり、大量の湿布薬を持って帰られます。レントゲンやMRI検査を行うと腰椎(腰の背骨)が変形したり潰れたりしています。「腰椎圧迫骨折」や「脊椎管狭窄症」といった診断名がつくことになります。

 なぜ、こんなにまで変形してしまうのか、どんな生活をされているのかを知りたくて(体験したくて)昨年からせめて稲刈りだけでもと思い、近所の農家にお願いして体験してみました。現代の農業は機械化がかなり進んでいて、バインダーやコンバインがさっさと稲を刈ってくれます。しかし田んぼの隅っこは鎌で手刈りを必要とします。中腰で前進しながらの手刈りは腰が痛くて、3分毎に腰を伸ばして行いました。最後に組んだ竿に「掛け干し」をします。稲を抱えて渡す役、竿に掛ける役が協働して行いましたが、特に渡す役は何回も腰を曲げ伸ばしが必要で重労働でした。2時間で約2アールが終了し、わずかでしたがやり遂げた達成感を味わいながらお昼ご飯を楽しく頂きました。そのときです。田んぼのほうで「バキバキー」という音がして、さっき掛け干しした竿が折れて、全部倒れていました。痛む腰を上げてのやり直し作業で、ちょっとした空しさを味わいました。台風などの自然災害があったりした場合にはさぞや大きな落胆があるのだろうと推察しました。

 長い間、体を酷使してきたお年よりの腰痛疾患などは、多くの場合すっきりと治ることはありません。手術で治る場合もありますが、大抵は諸事情のため敬遠されます。こんな時はつい「無理すっといかんたい、安静にしとかんと直らん!」と我々は冷たく言ってしまう場合があります。しかし、農業の現場を体験し、多くの苦労と収穫の喜びなどを理解すれば自然と、「大変だもんね、でも休み休みやろうね、無理せんごつね。時間が出来たらリハビリでもしに来てよかよ」といった声かけができるようになるものです。

 進んだ医学も年齢的な変化には対応できない場合もたくさんあります。そんな医療側の葛藤(かっとう)も理解していただき、私達も皆さんのお仕事や生活環境を理解し、お互いに共感し合える医療を目指して、患者さんとお付き合いしてゆきたいと私は思っています。


〜知って得する健康講座 第17集〜  胆石症について(その3)    副院長 大城 一

●腹腔鏡下手術ってなに?

 手術といえば、メスで身体を切る痛いイメージがつきまといますが、内視鏡外科手術は、身体に大きな切開を加えることはありません。手術の種類によって腹腔(おなかの中)や胸腔(むねの中)、後腹膜腔(せなかやおなかの中)などに小さな穴(径5〜10mmの切開)を数カ所開けて、そこからカメラと小さな手術道具(腹腔鏡や特殊な鉗子)を使いテレビモニターを見ながら行う手術です。腹腔内の手術が多いため、腹腔鏡下手術とも呼ばれています。

 腹腔鏡下手術のメリットは、美容上優れていること(創が小さいこと)はもちろんのこと、なんといっても患者様の体の負担が少ないという事です。小さな創により術後の痛みが少なく、手術による体への負担が小さくなれば腸蠕動の回復も早まり、患者様の入院期間の短縮にもつながります。今後は、従来の開腹手術の半分以上が内視鏡外科手術に置き換わるともいわれてます。この手術が行われるもっとも一般的な病気が胆石症です。症状のない方はなかなか治療を受けたがらないと思いますが、この手術は体への負担が少ない、傷跡も小さい、また数%以下の確率で胆嚢ガンを合併している、という理由から、胆嚢の壁が部分的に厚いときには手術を勧めます。近年では90%以上の胆石症の患者様が腹腔鏡下手術を受けていると言われています。

 当院でも腹腔鏡下による胆嚢摘出術は安全に行っておりますので、胆嚢に石があると言われた事がある方は一度受診をお勧めします。


〜蘇陽病院内見て歩き〜  井無田へき地診療所の紹介            医師 末綱 靖

 井無田診療所は旧清和村井無田地区にあり清和高原天文台の近くに位置します。井無田高原にあり非常に空気がきれいな所です。診療所は毎週火曜日の午後に、約2時間程度開所し診療を行っています。医師1名、看護師1名、事務員1名の3人体制で、診察、採血や投薬、点滴、電気治療などを行っています。更に詳しい検査が必要な患者様や他科受診(眼科、整形外科、循環器科など)が必要な患者様は本院である蘇陽病院を受診して頂いたり、また熊本市内の総合病院と連携を取りながら診療所と双方で治療・経過観察を行っている患者様もいらっしゃいます。

 4週間に1回の診察を原則とし、井無田地区を中心に毎回15名ほどの方が受診されます。本院への交通の確保が困難な高齢の方がほとんどで、中には30分ほどかけていらっしゃる方もおられます。H18年からは川口・郷野原地区を中心に患者様の送迎を始めたところ、大変喜ばれております。地域に無くてはならない診療所として、各部署と綿密な連携を取りながら、これからも頑張って診療を行っていく所存ですので、よろしくお願い致します。


地域の命を守りつづけて 蘇陽病院が大臣表彰受章

 町立国民健康保険蘇陽病院が、救急医療功労者として、厚生労働大臣表彰を受章しました。医療功労者表彰は、多年にわたり地域の救急医療の確保、救急医療対策の推進に貢献した団体及び個人を表彰するものです。 蘇陽病院は、昭和22年開業、今年で62年目を迎えます。昭和58年に救急告示病院として指定を受けて以来26年間、実直に地域の救急医療の需要に応えてきました。救急隊との情報交換・連携を密にして迅速な受け入れ体制の確立を図っています。

 昨年度は、救急患者総数2,225件(うち救急車搬入件数223件)の救急に対応、救急ヘリと連携したことも2件ありました。数年前には当院で緊急手術を行い、一命を取り留めた患者さんもいるなど、地域の方々の生命を守り続けてきました。 水本誠一病院長は、「初代の東陽一病院長の意志を代々受け継いできた結果です。これからも変わらず地域の救急医療を守っていきたい」と決意を新たにされています。

平成21年10月号

〜知って得する健康講座 第16集〜  胆石症について(その2)    医師 末綱 靖

 今回は胆石症の診断についてお話したいと思います。

●胆石症はどんな病気か
  蛋白質や脂質の消化・吸収を助ける胆汁は、肝臓で生成され肝内胆管や胆管を経て胆嚢管(たんのうかん)から胆嚢に流れ込み貯蔵されます。胆汁の成分は胆汁酸、コレステロール、リン脂質、ビリルビン、水などです。
  胆嚢は、洋梨のような形をした袋で、胆汁の水分を吸収して7〜10倍に濃縮する臓器です。胃から十二指腸に食べ物が送られてくると、胆嚢が収縮して、濃縮した胆汁を胆管を介して十二指腸へ送り出します。
  この胆汁の通り道(胆道)にできる石(結石)を総称して胆石といい、肝内胆管の石を肝内結石(かんないけっせき)、胆管の石を胆管結石(たんかんけっせき)、胆嚢の石を胆嚢結石(たんのうけっせき)と呼んでいます。
  日本人の胆石症は、食生活の欧米化や高齢化により増加し、成人人口の約10%に達しています。胆嚢結石が約80%と最も多く、胆管結石は約20%、肝内結石は1〜2%の割合となっています。

●検査と診断
 診断のためには、まず詳しい症状の聞き取り(問診)や聴診、触診、必要に応じて血液検査などを行います。血液検査では、肝臓や胆道の酵素上昇や胆道感染、胆道がん(腫瘍マーカー)をチェックします。

@
胆石が疑われる時には腹部超音波検査を最初に行います。おなかにゼリーを塗り超音波を当て、胆石があるかどうか、またその大きさ、胆嚢の壁の状態などを調べます。結石の種類や胆嚢炎を併発していれば炎症の程度もわかります。胆嚢結石の98%はこの検査で診断できます。食事の影響を受けるため、絶食での検査となります。
A
腹部CT検査では、腹部内部の断面図の画像を撮影して、胆石の成分や大きさ、位置、がんの有無、がんが周囲の臓器に広がっていないかなどを調べます。
B

静脈性胆嚢造影検査は、造影剤を注射したあとで胆嚢を撮影して、胆嚢の状態(収縮能)をみる検査で、胆嚢の石を溶かす治療を決定する時に必要となります。

C

内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)は、口から入れた内視鏡を十二指腸まで送り込み、胆管の出口から造影剤を胆管に流して撮影する検査です。胆管の状態を詳しく知ることができると同時に、石を取り出す治療としても使われます。胃カメラをのむ苦痛と検査後に膵炎を起こすことがあります。

D

経皮経肝胆道造影(PTC)は、皮膚と肝臓に細長い針を刺して、胆嚢や肝臓のなかの胆管を造影剤で映し出す検査です。

E

磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)は、造影剤が不用で、リスクの高い場合でも胆管や膵管を映し出すことができる検査です。苦痛なく行えますが、この設備を備えている医療機関は限られています。もちろん、当院でも行うことができます。

F
超音波内視鏡検査(EUS)は、超音波を発する装置をつけた内視鏡を口から十二指腸まで送り込み、そこから超音波を当てて胆嚢や胆管を調べる検査です。腸管ガスなどに邪魔されず、精度の高い鮮明な画像が得られますが、胃カメラをのむ苦痛が伴います。  区別すべき病気としては、上腹部痛を起こす胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃腸炎、膵炎、食道ヘルニア、逆流性食道炎、腎結石、虫垂炎(ちゅうすいえん)、腸閉塞、腹膜炎、虚血性(きょけつせい)心疾患(狭心症(きょうしんしょう))、悪性腫瘍として胆嚢がん、胆管がんなどがあります 。


腹部超音波検査

腹部CT検査

磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)

内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)

 胆石症は腹部超音波検査でほとんどわかります。症状のある人はもちろんのこと、症状のない人も検診などで気軽にできる腹部超音波検査をお勧めします。


〜蘇陽病院内見て歩き〜  柏歯科診療所の紹介                歯科衛生士 小崎 浩美

 まだ暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 今回は柏歯科診療所を紹介させていただきます。当診療所は、蘇陽病院より12km離れた旧蘇陽地区柏にあります。現在歯科医師1名、歯科衛生士2名(1名は現在休職中)、事務1名で業務を行っています。 一般診療の他、毎週水曜日の午後、訪問歯科診療を行っています。寝たきりの方や通院困難な方が対象です。事前に連絡をいただければこちらから出向いて参ります。

 私たちの喜びは、患者様の笑顔です。遠くからわざわざ足を運んでくださる患者様、診療が終わった後“ありがとう”といってくださる患者様に医療側の私達こそ感謝したい気持ちでいっぱいになります。いくつになっても“何でもおいしく食べられる”ということは幸せなことです。そのためには、自分の歯が1本でも多く残っていることが大切です。 歯でお困りの方は当診療所を気軽に利用していただければと思います。相談のみでも構いません。 尚、予約制になっておりますので(急患は対象外です。)、事前に連絡をいただければ助かります。どうぞ、よろしくお願いいたします。

平成21年9月号

〜院長コラム〜 病院づくりは地域づくり、地域づくりは病院づくり         病院長 水本 誠一

 8月も終盤に近づいてきました。朝夕は秋の気配が感じられますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。夏祭りや秋祭りの準備が忙しい方もいらっしゃるかと存じますが、後継者不足の問題もあって少しずつ寂しいものになってきたとも耳にします。今回はその様な事に少し関連して、地域で医療を担ってゆくにあたっての私の“こだわり”の一つをお話しいたします。

 全国の自治体病院の8割近くが赤字経営に陥っているといわれ久しいものがあります。当蘇陽病院も例外ではありません。その背景には様々な内的外的要因がありますが、熊本市民病院などの都会の大きな病院と、蘇陽病院のような過疎地域の小病院とではその問題にも大きな違いがあります。では、蘇陽病院での問題は何なのか?私は、その一つに地域経済の衰退化、過疎化そのものがあると思います。

 山都町は地域の人口が減少し、経済(農業や林業、建設業など)が振るわず、生活に困窮されている方もたくさんおられます。食料は自給しながら月額約3万円の年金でぎりぎりの生活をされているお年よりもたくさんおられます。しかしお年よりは持病をお持ちの方も多く、わずかな現金の中から病院に医療費を支払われます。このような現状を知ると、私は検査の必要を感じても、すこしずつ優先順位をつけてお勧めするなど、病院の経済よりも患者さんの経済を優先して医療を行わざるを得ない場合もあります。

 以上のような山都町の現状の根底には、農政、雇用、教育など政治の問題が横たわっており、たとえば今回行われる衆議院選挙などでわれわれが民意を示し、改善を望むことしか根本的解決はありません。しかし、われわれが足元でできることが少しでも無いかと考え、昨年から地域の夏祭り「馬見原火伏地蔵祭り」にあわせて病院職員有志でエイサー隊(沖縄の踊り)を編成し威勢よく踊りを披露しています。

  昨年は皆さんに大変喜んでもらいましたので、今年も練習を重ねて参加する予定です(広報が発行されるときには終わっているかもしれませんが・・)。他にも、安いからと熊本市で買い物をせず、地域のお店でできるだけ買い物をしようと、職員にいつも言っています。私も地域の街づくりの会合にも顔を出し、「よそ者の目」から提言をしています。

 地域に元気が無いのにそこにある病院だけが黒字で元気があるなどということはありえません。ほんの小さなことかもしれませんが、できることから皆で町を盛り上げることが大事です。その過程で醸成された信頼関係を元に、どういう機能を備えた病院にするのか地域の皆さんと一緒に議論を重ねて、新病院建築に臨みたいと考えております。


〜知って得する健康講座 第15集〜  胆石症について(その1)   医局長 米山 哲司

●胆石症とは
  皆さんの“うんち”の色は何色でしょうか?もちろん黄色い色をしていますよね。その色の基になっているのが肝臓から作られる胆汁という成分です。肝臓から胆管という管を通って十二指腸という腸に流れます。その胆管の途中に木の実が生ったような臓器があります。これを胆嚢といっています。それではまず体の解剖から見てもらいましよう。

 以上を知ってもらった上で、胆石症とは、胆のうや胆管に石ができて、痛みなどさまざまな症状を引き起こす病気の総称をいっていることをまず覚えておいてください。

●胆石の分類
  胆嚢には胆汁を貯めて・濃縮して・送り出す役割があります。この濃縮の段階で胆汁成分が変化してある成分が析出してしまうことがあります。析出する構成成分はコレステロールと色素(ビリルビン)の2つに大きく分けられます。胆嚢内でコレステロールが結晶化したものをコレステロール結石といい、一方胆汁中のビリルビンとカルシウムが結合して石となったものをビリルビン胆石といいます。中年に多いのはコレステロール結石で高齢者に多いのはビリルビン胆石といわれています。また、胆石のある場所によって、胆嚢胆石、胆管胆石、肝内胆石に分けられています。

●胆石症の原因
  胆石ができやすい条件としては、胆汁成分の変化を挙げましたが、それ以外でも、胆汁のうっ滞、胆道の感染などもあげられます。 また、胆石の形成を促進する因子として、脂肪を中心とする食事のとりすぎ、肥満、運動不足などが考えられています。

●胆石はあなたにもある??
 日本人の胆石保有率は、15〜20%の人が胆石をもっているのではないかと推測されています。ちなみに胆石のうちコレステロール胆石が80%、ビリルビン胆石が10%前後の割合を示しており、とくにコレステロール胆石は1対2の割合で女性に多い傾向があります。また、年齢が高くなるほど胆石の保有率も高くなり、60歳以上の老人では、若い人の2〜3倍も多いといわれています。さらに、女性のコレステロール胆石以外に男性の胆管内のビリルビン胆石も多くなります。

●胆石症の症状
  胆石症の最も特徴的な症状は、胆石仙痛発作とよばれる急激に起こる激しい発作性の上腹部痛です。脂肪分の多い食事(天ぷら、うなぎ、中華料理など)をとってから数時間後に出現することが多く、一般的には夕食後の寝入りばなに起こりやすいようです。これは、胆石が胆嚢管や胆管の末端に嵌頓することによって起こります。本人は「胃けいれん」と感じることがあります。悪寒、戦慄、発熱などを伴うこともあります。腹痛は、心窩部(みぞおち)から右季肋部(右脇腹)にかけて出現し、右肩や背中へ放散していきます。
  ただ、老人の胆石は無症状胆石が多いのですが、いったん発症すると急激に悪化しやすいので、けっして侮れません。 激しい仙痛発作を起こさなくても、右脇腹の鈍痛、重圧感、右肩のこり、右背部痛などの症状だけのこともあります。また、なんら症状がない人も珍しくありません。胆石の嵌頓により、胆嚢炎を伴って、腹痛、発熱とともに黄疸がみられることもあります。

●最後に
  胆石症は意外にありふれた疾患であります。しかし、症状はきつく、場合によっては重症化してしまうということは理解して頂けたと思います。胆石に該当する症状があるか、または検診ですでに胆石を指摘されたなど、胆石に関してご心配がございましたら、最寄りの医療機関を受診していただけたらと思っております。 次回は胆石症の診断・検査などを詳しくお話しする予定です。


〜蘇陽病院内見て歩き〜  医局の紹介                  医師 米山 哲司

  当院の医局には常勤医5名、非常勤6名の計11名が在籍しております。 常勤医は以下の顔ぶれです。

  院長の水本医師はすべての消化器外科手術(胃・大腸・肝・胆・膵手術など)をこなす消化器外科専門医です。地域医療に情熱があり、山都町をこよなく愛しております。副院長の大城医師は内科・外科から各種の検査をこなすオールラウンドプレーヤーで、中でも乳腺・小児外科を得意としております。現在、緑川診療所長も兼任しています。蘇陽地区のミニバレーにも参加しているスポーツマンでもあります。

 医員の末綱医師は一般外科の中でも血管外科を研鑽しており、下肢静脈瘤を中心に血管手術を行っております。現在、井無田診療所長も兼任しています。医局員の中で蘇陽病院が一番長く、病院・地域を知り尽くしています。医員の井野医師は当院唯一の内科医で、消化器内科が専門です。内視鏡診断・治療を得意としております。現在、北部診療所長も兼任しております。写真が趣味な若手医師です。医局長の私、米山は、一般外科が専門ですが、家庭医療も経験している変り種です。当院でその経験を生かせるように奮闘しております。

 業務内容は一般外来を月曜日から金曜日から行い、午前に予約制を導入して診療に当たっています。胃内視鏡やエコー(腹部・乳腺・頚部)は月曜日から金曜日の午前中に、大腸内視鏡は月・木・金曜日の午後に行っています。また内視鏡によるポリープ切除や早期胃がんの切除、エコー下治療も行っております。手術は、水曜日の午後を手術日として、一般外科を中心に、ヘルニア・虫垂炎・痔核から消化器癌、更には整形外科領域などなど幅広く行っています。

  非常勤医師6名の先生方には、循環器科(火曜日)・ダイエット外来(水曜日・午後)・整形外科(木曜日)・眼科(木曜日・午後)・神経内科(土曜日・午前・隔週)をそれぞれ担当してもらっております。一方、山都町唯一の救急指定病院として24時間救急患者にも対応しております。市内の3次救急病院とまでは行きませんが、ある程度の1次・2次救急をカバーできる体制にあると自負しております。当院で対処できないときは、市内の専門病院に迅速に紹介・搬送するようにしております。

 我々は“診療科にとらわれないすべての患者に対応できる総合医”、“町民の健康は地元の病院で”、“地元で完結できる医療”を目標に少数精鋭でがんばっております。必要なときには気軽に当院をご利用していただけたらと思っております。


〜第16回蘇陽病院院内学会を終えて〜              学術・広報 井野 裕治

 6月27日に馬見原公民館におきまして平成21年度の院内学会が開催されました。 多くの方が見学に来られた中、院内スタッフによる演題が7例と長賓寺の藤川顕彰住職による特別講演が行われました。

 院内スタッフの演題では病院の医療物品、物流の新しい管理システムについてまとめたものや、終末期の患者様の心理についてまとめたもの、僻地診療所における薬剤管理についてまとめたもの、訪問看護についてまとめたものなど様々な発表がありました。私は客観的に発表を聞いていましたが、発表を聞いて感じたことは、私などはついつい医療における技術的なことや知識にのみ目が行ってしまいがちなのですが、多くのスタッフが蘇陽病院をより良くするためにはどうすれば良いか、あるいは患者およびその家族に満足の得られるためにはどうすれば良いのかということに重点を置いており、患者様の心理についてもこと細かに観察していることに感銘を受けました。

 藤川顕彰住職には仏教的視点を通しての人間としての安心した生き方についてご講演いただきました。特に印象的であったのは仏教の世界では人生の「生・老・病・死」を四苦と表現するということです。「老・病・死」が“苦”であることはすぐに分かりますが、「生」が“苦”であるとはどういうことでしょう?答えは「病気となり・老い・死していくことを生まれながらに運命づけられているから」とのことです。奥が深いですね…。ちなみに医療とは生・老・病・死の四苦全てに関わる仕事になります。そう考えてみると医療従事者がこの四苦と立ち向かう際には仏教的な倫理観、生命観が必要となってくるのかも知れません。 院内学会は来年も6月頃に開催する予定です。一般の方も見学が可能ですので、多くの方のご参加をお待ちしております。

平成21年8月号

〜知って得する健康講座 第14集〜  熱中症            病院長 水本 誠一

●はじめに
  今年の梅雨は、前半は雨が少なくどうなる事やらと思いましたが、どうやら大きな被害もなく上がったようで、ホッとしています。これからは高原の山都町が最も住みやすい季節になります。自然の陽光や恵みを受けて、お仕事にスポーツに、短かくも快適な夏を楽しみたいものです。おっと、ここで注意していただきたいのが、本日お話しする「熱中症」です。

●熱中症とは
  熱中症とは、物事に集中(熱中)しておこることではありません。高温多湿となるこれからの時季に炎天下での農作業や土木作業、ビニールハウスなど熱のこもりやすい場所での作業を行うことによって発生する身体障害の総称で、次のような病型があります。

1)熱失神
皮膚血管の拡張によって血圧が低下し、脳に流れる血液 が減少しておこるもので、めまいやひどい場合には失神 (意識消失)などがおこる状態です。顔面そう白となっ て、脈は速くて弱くなります。
2)熱疲労
汗を大量にかいたためにおきる脱水(体に水分が足りな くなる)による症状で、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、 吐き気などがみられます。
3)熱けいれん
大量に汗をかいたときに水だけしか補給しなかったた め、血液の塩分濃度が低下して、足、腕、腹部の筋肉に 痛みをともなったけいれんがおこる状態です。
4)熱射病
体温の急激な上昇によって脳の中枢機能に異常をきた した状態です。意識障害(反応が鈍い、言動がおかしい、 意識がない)がおこり、処置が遅れると死亡することも あります。

 まとめると、汗を大量にかいたり、体温が高くなる環境にあって、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気、けいれん、意識が遠のくなどの症状があるときは、熱中症を考えてください。

●熱中症が起きやすいのはどんな時か
  熱中症にはおきやすい時期があります。それは急に暑くなったときです。@梅雨の合間に突然気温が上昇した日、A梅雨明けの蒸し暑い日、B休み明けの部活動の初日などが危険とされています。山都町の方が梅雨明けに灼熱の熊本市に遊びに行くときも要注意ですぞ! なぜかというと、暑い環境での体温調節能力には、暑さへのなれ(暑熱順化)が関係しているからです。私たちの体は4〜5日で約8割程度、夏の暑さになれてきます。ですから、急に暑くなったときは作業や運動を軽くし、暑さになれるまでの数日間は、短時間の軽いものにして徐々に増やしていくようにしましょう。

●熱中症にかかりやすい体の状態は?
  熱中症を起こしやすい人は、@体力の弱い高齢者や、糖尿病・高血圧のなどの基礎疾患をお持ちの方 A暑さに慣れていない方 B以前熱中症をおこしたことがある方 A肥満の方 などとされています。特に高齢者の方はクーラーがない閉め切った室内でも熱中症をおこします。近所に高齢者だけのお宅がある場合には、みんなで声を掛け合って気をつけてあげたいものです。また、ふつうは元気な方でも体調が悪いと体温調節能力も低下し、熱中症につながります。二日酔い、疲労、発熱、かぜ、下痢など、体調の悪いときには無理に運動しないようにしましょう。

●熱中症の時の救急処置法
  熱中症が疑わしい場合には、医療機関にかかるのが一番と思いますが、念のために応急処置は3つのポイントがあります。一口で言うと、 1.休息  2.冷やす 3.水分を補給させる の3点です。

1.休息
まず、涼しいところ(木陰など)で休息させましょう、衣服をゆるめたり、脱がせたりする必要がある場合もあります。痙攣をおこしている部分がある場合はマッサージなどでほぐしても有効です。
2.冷やす
濡れたタオルなどでひやします。首や脇の下、足の付け根などを集中的に冷やします。うちわや扇風機で風を送ってやるのも有効です。
3.水分補給
塩分が含まれた水分を少しづつ与えます。冷やしたスポーツドリンクがあれば完璧です。
4.救急車を手配する
熱中症の症状が重い場合は救急車の手配が必要です。到着までは応急処置を行い、すみやかに病院での治療を行いましょう。

● 病院で行われる熱中症の治療
  多くは救急車で病院にいらっしゃいますが、軽症の場合はご家族が連れてこられる場合もあります。

1)熱失神、熱疲労の場合
涼しい場所に運び、衣服をゆるめて寝かせ、水分を補給すれば通常は回復  します。足を高くし、手足を末梢から中心部に向けてマッサージするのも有効です。吐き気やおう吐などで水分補給ができない場合など、多くの場合に点滴を行います。必ずしも入院になるとは限りません。
2)熱けいれんの場合
体に塩分が不足していますので、生理食塩水(0.9%)を補給すれば、通常は回復します。塩分の補正に時間を要する場合には短期に入院していただくこともあります。
3)熱射病の場合
これは脳の中枢に異常が及んでいるので、死の危険のある緊急事態です。体を冷やしながら、集中治療を行います。いかに早く体温を下げて意識を回復させるかが予後を左右するので、現場での応急処置が重要です。救急隊が現場に到着したら、おそらく濡れタオルを当てて扇いだり、くび、腋の下、足の付け根など太い血管のある部分に氷やアイスパックをあてるなどの処置で急速に体温を下げる処置を講じてくれると思います。意識障害は軽いこともありますが、応答が鈍い、言動がおかしいなど少しでも異常がみられる時には重症と考えて処置をします。

●熱中症の予防法
  熱中症を起こしやすい時期や、体の状態を前述しましたので、予防法はもうお解りかと思います。

@
基本は、熱い時(特に急に暑くなった時や梅雨明け)には無理をしないことです。
A
それでも暑い時に活動をしなければならない時は、服装は軽装にし、素材も吸湿性や通気性のよいものにしましょう。
B
屋外で直射日光がある場合には帽子を着用しましょう。帽子に顔や首筋を覆うものが付いているものが最適です。
C
水分補給はマメに行ないましょう。喉が渇いてから沢山水分をとるより、喉が渇く前にコマメにチョビチュビ飲むのがコツです。補給には0.1〜0.2%程度の食塩水がお薦めです。水だけの場合より、スポーツ飲料や塩を携帯したり、最近ですと塩キャンディ・塩飴などがあるので熱中症グッズを準備しておくのが良いでしょう。

●最後に
  かつて熱射病による死亡事故は軍隊や炭鉱、製鉄所などの労働現場で問題になりましたが、これらは活動基準や労働基準が策定されることによって現在ではほとんどなくなりました。かわって最近では青少年のスポーツによるものや、ひとり暮らしや老老介護(高齢者だけの世帯でお互いを介護する状態)の高齢者が締め切った蒸し暑い室内にいて熱中症が起きたケースが問題となっています。先日の熊日記事によれば熊本市で毎年約150人の方が熱中症で救急搬送されているとのことです。そのうち3週間以上入院した重傷者が9人で、いずれも高齢者であったとのことです。前にも書きましたが、近所に高齢者だけのお宅がある場合には、みんなで声を掛け合って気をつけてあげたいものです。


〜蘇陽病院内見て歩き〜  栄養科    <栄養科の紹介>               管理栄養士 工藤 操

 栄養科と言いましても、調理業務と給食及び栄養管理業務の2つに大きく分かれます。調理は、調理師8名で入院患者様お一人お一人の状態に合わせた食事を作っております。一方、給食及び栄養管理業務は現在、管理栄養士1名で行なっているところです。

 まず、患者様の食事に対しましては衛生管理、食材の質に充分配慮しながら安心・安全な治療食を提供していけるよう心がけております。定期的に科内での勉強会を開き、気を引き締めているところです。また、入院中唯一の楽しみは食事であったり、食欲が低下した患者様に一口でもよいから食べていただきたいとの思いから、地元の旬の食材を活かし、あるいは郷土料理を治療食にアレンジし、限られた予算の中で作り手の気持ちを添えてお出ししています。 患者様からは、お礼の言葉をいただくことも多く、食べ残しも減り、作っている現場の励みとなっております。

 更に入院中、患者様の栄養状態の把握も大切です。栄養状態が悪ければ病気の回復も遅れます。そこで、週2回の院長回診には管理栄養士も同行し、先生方の治療方針と現在の患者様の栄養状態を比較し、今お出ししている食事が適切か、きちんと食べていただけているか、いろんな薬との併用で問題ないか、等々確認し必要に応じて改善していきます。また、入院のみならず外来の患者様に対して必要に応じて食事に対する説明もしております。ただ、専用の栄養相談室がなく、空いている空間を使いますので、この点においては患者様に大変ご迷惑をおかけしているところです。

 最後になりましたが、当科スタッフ9名の目標を紹介させていただきます。 @ 病態に応じたおいしく、しかも安全な食事の提供。 A 食事を通して栄養状態の改善。 B 思いやり、笑顔を忘れず他職種と協働し明るい職場づくり。 病院の食事や栄養に関して、御意見御質問 等がありましたら、いつでもスタッフにお声をかけて下さい。


地元の特産物・旬の食材を活かした治療食

今回は矢部のお茶、清和のトマト、蘇陽のブルーベリーを利用
500kcal・蛋白質18g・脂質14g・塩分2.7g

 

平成21年7月号

〜院長コラム〜  専門医と総合医                   病院長 水本 誠一

 毎日うっとうしい天気が続きますが、皆様体調はいかがでしょうか。この季節は人間にとってはつらい季節ですが、農作物の生育には大事な時期かと思います。支柱に絡まって元気よく育つキュウリやトマトの苗を眺めながら、今回は「専門医」と「総合医」についてお話ししたいと思います。

 現在の医学の進歩には目覚ましいものがあり、われわれ医師はそれに乗り遅れないように情報を収集し勉強を怠らないように努めねばなりません。しかしながら、たとえば循環器科、神経内科、整形外科、眼科などそれぞれの治療法は専門性を極め、その全部をひとりで全て理解することは不可能です。そこで、医師はせめて一つの診療科だけでも知識や技術を深く理解しマスターすることを目指し、達成すると「専門医」と呼ばれます。

 一方で、もっと広く浅くあらゆる診療科の知識を兼ね備えた医師を「総合医」と呼んでいます。いわゆる「何でも屋」ということです。日本では専門医に比べると総合医は“格下”とみられる風潮がありますが、欧米では総合医としての資格試験があって価値が認められています。

 最近は、特に若いドクターの間には専門医志向が強く、専門医がたくさん集まった大病院に就職し自分の専門分野のみを担当してゆくことを望む場合が多いようです。その背景には、「専門医しか信用できない」「何でも屋はやぶ医者だ」と考える患者さんも多く、医療訴訟でも「専門医の資格を持っていたか」が問われる場合がある、などの要因もあるようです。この現象が総合医を必要とする地方中小病院の医師不足の原因にもなっているのです。

 さて、広大な面積に18000人が散らばって居住する「過疎地」に立地する蘇陽病院の状況はどうでしょう。現在、一ヵ月交代で勤務している研修医を含めて6人の医師が常駐していますが、専門は内科1、消化器外科2、小児外科2となっています。日々の患者さんの多くは、高血圧、糖尿病や、肺炎や脳梗塞などのごくありふれた“一般内科”の患者さんが多くを占め、我々は専門性にこだわらずこれらの病気を診察・治療をしなければなりません。そのためにいろいろな機会を利用して“総合医”を目指して勉強をしています。しかし総合医の視点ばかりではいけないので、眼科、整形外科、循環器内科、神経内科など特殊分野の専門医に熊大病院から応援に来てもらっています。

 菜園に立てた縦支柱は、苗の成長に寄り添って倒れるのを防ぎますが、この様子を患者さんの一生に寄り添って支えてゆく「総合医」と思ってください。嵐が来たら縦支柱だけではいけないので、横支柱も結びつけますよね。この横支柱を「専門医」と思ってください。専門医(横支柱)は、患者さんの一生(野菜つる)のごく一部にしかかかわらないしそれだけでは成り立って行かないけれども、総合医(縦支柱)と協働(ひもで結わえて)してはじめて重要な役割を果たすことになります。総合医(かかりつけ医)の重要性がお分かりいただけたかと思います。

 以上のように、我々蘇陽病院の医師は、質の高い「総合医」を目指し努力しつつ、専門医の助けを得ながら、山都町の人々の人生に寄り添って支えてゆきたいと願って毎日の診療に勤しんでいます。


〜知って得する健康講座 第13集〜  蜂刺され               副院長 大城 一

 今回は蜂さされについてのお話です。

● 総論)
  蜂に刺されて亡くなる方が、日本では毎年30名ほどいるといわれていますが、これは、蜂の毒がそれほど恐ろしい猛毒であるというわけではなく、急性アレルギー反応である、アナフィラキシーというものによるものです。

◆ ハチ刺傷の多い時期
ハチ刺傷件数は4月から増えはじめ、7〜10月に多発します。これは、この時期に営巣や幼虫の養育など、ハチの活動が盛んとなり、攻撃性が増すためと考えられています。
◆ よく刺されるハチの種類
ほとんどがアシナガバチ、スズメバチによるものです。 アシナガバチが最も多く全体の73%、次にスズメバチ・クロスズメバチの23%で、ミツバチは1%程度と報告されています。

● 症状)
  ハチ毒そのものによる作用(中毒症状)と、ハチ毒に特異的なIgE抗体が作用するアレルギー反応があります。

■中毒症状
ハチに刺されたすべての人に起こりうる反応です。 刺された部位に発赤、腫脹(はれ)、疼痛が起こり、一般的には数時間で消えます。大量にハチ毒が注入された場合には、数分で全身浮腫(むくみ)やショック症状など、重篤な症状も現れることがあります。
■アレルギー反応
体内にハチ毒に対するIgE抗体が作られている人が起こす反応です。 局所反応(刺された部位周辺に現れる反応)と、全身症状(刺された部位以外にも現れる反応)があります。 ハチに刺された例で、全身症状の頻度は約10〜20%で、ショック症状の頻度は数%と報告されています。
●局所反応
刺された部位に腫脹(はれ)が起こります。広範囲に長く続くこともあり、そのような場合は、次回刺されたときに全身反応を起こす危険性が高くなるとされています。
●全身症状
全身のじんましん、嘔吐・吐き気、寒気、動悸、呼吸困難、血圧低下、意識障害(ショック症状)などがあります。

● 予防)

・ハチの巣に近づかない
・家屋内に営巣させないために穴をふさぐ
・肌に密着する衣類を着用し、服の下にハチが入らないようにする
・白っぽい服を着る
・花模様のある服や黒い服を避ける
・芳香のある化粧品を避ける
・戸外で甘味物を食べない
・自動車の窓を開け放しにしない
・ハチに刺されないために止まらせない(止まると刺すので)
・洗濯物を取り込むとき、ハチを紛れ込ませない
・不必要なときに、藪の中に入ったりしない
・見張り役のハチを見かければ、巣が近いことを知る


〜蘇陽病院内見て歩き〜  受付窓口の紹介                     受付 津川 美惠子

 日差しが強くなり始め、夏本番の到来に皆様いかがおすごしでしょうか。今回は医事係について少し紹介させていただきます。

 蘇陽病院に勤めて早一年がたちました。現在5名のスタッフで患者様の対応をしております。 朝7:45分にミーティングを行い一日が始まります。一年前は無我夢中で、カルテを診察室に持っていくことにホット胸をなでおろす状態でしたが、現在では仕事の流れもスムーズにいくようになってきました。また、患者様の顔と名前を覚え、窓口でちょっとした会話もできるようになりました。曜日によっては循環器・整形・眼科があり患者様も多く、走り回っている中、笑顔で「大分なれましたね」と患者様の一言がうれしい半面、頑張らなくてはと元気を頂くことがあります。 「患者様を待たせないこと」を目標にスタッフ全員日々精一杯頑張っております。

 行き届かないこともあるかと思いますが、何かありましたらお気軽に声をかけて頂きますようこれからもどうぞよろしくお願いいたします。


〜お知らせ〜

 第十六回蘇陽病院 院内学会が下記日程にて開催されます。特別講師として浄土真宗本願寺派 長寶寺の藤川 顕彰(ふじかわ けんしょう)先生が来られる予定です。

と き:平成21年6月27日(土)  ところ:馬見原公民館

時 刻
学 会 内 容
9:00
研究発表(7題)
10:30
( 予定)
特別講演
  演題 「人との関わりと仏教」

  講師  藤川 顕彰先生

藤川 顕彰先生のプロフィール
  1977年生まれ 龍谷大学大学院文学部研究科修士課程卒業し 現在は、熊本市富合町長寶寺若院 本願寺派布教使 浄土真宗本願寺派中央研修講師として活躍。

 

平成21年6月号

〜院長コラム〜 〜 日本国憲法に違反する?! 〜              病院長 水本 誠一

 今年も水田に水が張られ、かわいい早苗が整然と並ぶすがすがしい季節となりました。これから約五か月順調に育ってくれることと、台風が来ないことを祈るばかりです。
  さて今月のコラムは、何やら物騒な表題となりました。国の根幹を定義する日本国憲法、その中で「第25条」について最近思うことを書いてみたいと思います。以下に条文をそのまま記載します。

 

〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕
第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
A 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 山都町の住民は、農林産物の価格の低迷、公共事業の縮小によって、仕事や生活の面で大変に困っています。また物品には運賃などの上乗せ料金で割高となっており、生活を圧迫しています。今やテレビは「最低限度の文化的生活」の必要最低条件といっても過言ではないと思いますが、テレビの完全デジタル化が近づき、買い替え費用ばかりか、山間部ではそれ以上に経費のかかるアンテナ工事代の負担は大きく、テレビも見られなくなる家庭も出るかもしれません。
  一方、先頃の新聞に全国の公立(自治体)病院の経営状況や、今後の見通しが載っていました。全国に千ほどある自治体病院の約80%は赤字経営で、規模縮小や廃止に追い込まれている病院も出ています。自治体病院といっても地域の事情は様々で、民間病院がひしめく大都市の中での自治体病院と、蘇陽病院のように人口減少と高齢化、過疎化で苦しむ自治体の病院とでは存在意義はおのずと違ってきます。山都町、特に蘇陽・清和地区にとって、もし、蘇陽病院が存在しない場合を想像してみてください。風邪などの軽い病気でも遠くまで行かねばならなくなり、脳梗塞や心筋梗塞、消化管出血など一刻を争う救急疾患では搬送途中で命を落とすことにもなります。つまり、蘇陽病院は、山都町にとって「最低限度の健康な生活」の必要最低条件といっても過言ではないのです。そんな命綱の病院がなくなったり老朽化して建て替えもできないようでは、国民の「生存権」をおかす憲法違反状態とは言えないでしょうか。
  グローバル化(国際化)と経済優先、「選択と集中」を基本とした現在の国の政策は、地方自治体の財政状態の悪化を招き、自治体病院の経営維持をも難しいものにしており、まさに憲法第25条に明記してある「生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務」に違反しているものではないかと思います。この状態が早く解決され、地方・田舎が活気を取り戻し、地方が国力を支える世の中が来ることを夢見ながら、毎日の診療に勤しんでいます。


〜知って得する健康講座 第12集〜 梅雨時に多い食中毒          医師 井野 裕治

 さて今回は梅雨の時期に多く見られる食中毒について、簡単にお話をしようと思います。私も一度食中毒になったことがあります。それもやはり7年前の梅雨の時期でした。

●なぜ食中毒は梅雨の時期に多くなるのですか?
  食中毒を起こす細菌は20℃前後でよく繁殖し、適度な水分で増殖するからです。食中毒の発生はジメジメ蒸し暑い梅雨の時期から増えはじめ、夏場にピークを迎えます。厚生省の食中毒統計によると、毎年の患者数は何と400万人前後もいて、そのうち数人が死亡しています。400万人もいるとは驚きです。 (ちなみに冬場は寒冷、乾燥に強いノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性の食中毒が増加します。)

●どんな細菌が食中毒を起こすの?
  有名な起因菌は以下に示す4つです。 腸炎ビブリオ - 夏期の未加熱魚介類、刺身、シラス等に含まれます。海水の常在菌、発生ピークは6〜10月に見られます。数種類ありますがその中でもビブリオ・バルニフィカス菌は「殺人細菌」として有名です。特に肝機能が悪い人が感染すると敗血症、多臓器不全を起こして数時間で命を落とします。発生数は多くありませんが、私も県内の病院で1例診察した経験があります。サルモネラ属菌 - 鶏卵、鳥肉→とくに夏期の自家製マヨネーズ、アイスクリームに見られます。 カンピロバクター、カンピロバクター症 - 牛・豚、鶏肉、鶏卵、生乳、牛刺し、レバ刺し。家畜・家禽の常在菌であるため、その生食にリスクがあります。潜伏期間が2〜7日と長いのが特徴です。厚生省の統計では鶏肉のミンチからは20〜40%と高率に検出されています。原因食品の傾向はさまざまです。病原性を有する大腸菌群全体のことをさします。腸管出血性大腸菌は、毒力の強いベロ毒素(志賀毒素群毒素)を出し、溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併症を引き起こすのが特徴です。

● 食中毒はどの様な症状なのですか?
  下痢、嘔吐などの胃腸症状が見られます。上からも下からも水分を失うことになるので、あっという間に脱水になります。脱水は高齢者や乳幼児にとっては危険で点滴などの対処が必要となります。 細菌によってはインフルエンザ様症状や脳脊髄膜炎などの神経系統症状、母子垂直感染による流産などもあるようです。

●予防のためにはどうすれば良いのですか?
  食中毒予防の三原則は、食中毒菌を「付けない、増やさない、殺す」です。 厚生労働省のホームページから重要と思われる部分を抜粋しました。

  ポイント1 食品の購入

肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮な物を購入しましょう。
購入した食品は、肉汁や魚などの水分がもれないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包み、持ち帰りましょう。
特に、生鮮食品などのように冷蔵や冷凍などの温度管理の必要な食品の購入は、買い物の最後にし、購入したら早めに帰るようにしましょう。

  ポイント2 家庭での保存

冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は−15℃以下に維持することがめやすです。細菌の多くは、10℃では増殖がゆっくりとなり、−15℃では増殖が停止しています。
肉や魚などは、ビニール袋や容器に入れ、冷蔵庫の中の他の食品に肉汁などがかからないようにしましょう。
肉、魚、卵などを取り扱う時は、取り扱う前と後に必ず手を洗いましょう。 簡単なことですが、細菌汚染を防ぐ良い方法です。

  ポイント3 下準備

台所を見渡してみましょう。
ゴミはきちんと捨ててありますか?
タオルやふきんは清潔なものと交換してありますか?
せっけんは用意してありますか?
調理台の上は かたづけて広く使えるようになっていますか?
もう一度、チェックをしましょう。
井戸水を使用している家庭では、水質に十分注意してください。
手を洗いましょう。
生の肉、魚、卵を取り扱った後には、手を洗いましょう。
冷凍食品など凍結している食品を調理台に放置したまま解凍するのはやめましょう。室温で解凍すると、食中毒菌が増える場合があります。
解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行うとよいでしょう。また、水を使って解凍する場合には、気密性の容器に入れ、流水を使います。
包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは、使った後すぐに、洗剤と流水で良く洗いましょう。ふきんのよごれがひどい時には、清潔なものと交換しましょう。漂白剤に1晩つけ込むと消毒効果があります。

  ポイント4 調理

調理を始める前にもう一度、台所を見渡してみましょう。
下準備で台所がよごれていませんか?タオルやふきんは乾いて清潔なものと交換しましょう。そして、手を洗いましょう。
加熱して調理する食品は十分に加熱しましょう。
加熱を十分に行うことで、もし、食中毒菌がいたとしても殺菌することができます。めやすは、中心部の温度が75℃で1分間以上加熱することです。
料理を途中でやめてそのまま室温に放置すると、細菌が食品に付いたり、増えたりします。途中でやめるような時は、冷蔵庫に入れましょう。
再び調理をするときは、十分に加熱しましょう。
電子レンジを使う場合は、電子レンジ用の容器、ふたを使い、調理時間に気を付け、熱の伝わりにくい物は、時々かき混ぜることも必要です。

  ポイント5 食事

食事の前には手を洗いましょう。
乳幼児やお年寄りのO157などの腸管出血性大腸菌感染症は症状が 重くなりやすく、死亡率も高くなります。これらの年齢層の人々には加熱が十分でない食肉などを食べさせないようにした方が安全です。

  ポイント6 残った食品

残った食品を扱う前にも手を洗いましょう。
残った食品はきれいな器具、皿を使って保存しましょう。
時間が経ち過ぎたら、思い切って捨てましょう。
残った食品を温め直す時も十分に加熱しましょう。めやすは75℃以上です。味噌汁やスープなどは沸騰するまで加熱しましょう。
ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てましょう。口に入れるのは、やめましょう。

●治療はどのように行いますか?
 1日3〜4回程度の下痢なら経口的にスポーツドリンクなどを1日2リットルくらい摂取させ、消失した電解質を補います。1日6回以上の下痢なら前述のように点滴をした方が良いでしょう。下痢と一緒に原因となる細菌やウイルスも出ていってくれるので、止痢剤(下痢止め)は基本的には用いません。 細菌性食中毒の場合は短期間の絶食として点滴で水分、電解質の補給を行います。吐き気止めや腹痛を軽減する薬剤を用いた対症療法を行います。重症例には抗生剤の内服薬を用いて対処します。
  しかし予防に勝る治療はありません。上述の点に気をつけて梅雨を健康に乗り越えましょう!


〜蘇陽病院内見て歩き〜  事務部より                      総務係 今村 順一

 ご近所、親戚、家庭、親しい間柄でもコミュニケーションを上手にとることは難しいですよね。病院の付き合い方はそれ以上に難しいと考える人が大多数ではないでしょうか。
  患者様が病院側に対して不満に思う理由の一つとして、医療側が説明責任を果たしていないことが原因だといわれています。
  医師の言っている言葉が難しく理解出来なかったり、もっと詳しく聞きたいと思っても言いづらかったり... 診察室に入ると緊張してしまう人なら、自分の症状すらうまく言えなかったり、そういった経験はないですか?
  話すのがどうも苦手でという患者様は、症状・受診歴や過去の病歴・服用している薬、質問事項などを明記したメモをつくり、前もって受付、看護師に渡すか、もしくは医師に直接渡すのもいいですよ。
  事前に医師が患者様の状態を知ることで診察時間が短いながらも間違いが起こりにくいし、患者様の方でも聞き忘れがなくなり話をしやすいそうです。
  医療側と患者様を隔てる溝を少しでも埋めるように当病院では定期的に接遇の勉強会を開いています。特に事務部では医療側と患者様をつなぐ一番最初の入り口に当たります。それは電話であったり、受付であったりしますが、対峙したときに的確にやさしく丁寧に聞き取りスムーズに次の段階へつなぐ事ができるかが大切な役割のひとつでもあります。
  患者様が安心できるやさしい病院を目指し職員一同頑張っております。何かお気づきの点、御意見等ございましたら何でも連絡ください。今後の病院づくりに活用させていただきます。


〜新任医師紹介〜   医師 井野裕治

 初めまして井野裕治と申します。本年4月より蘇陽病院の内科医として勤務しております。蘇陽病院の前は出身大学である自治医科大学にて消化器内視鏡(いわゆる胃カメラ、大腸カメラ)などの勉強をしておりました。胃や大腸などのお腹の病気以外でも、幅広く診ることの出来る医師を目指しております。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 


お知らせ〜

 第十六回蘇陽病院 院内学会が下記日程にて開催されます。特別講師として浄土真宗本願寺派 長寶寺の藤川 顕彰(ふじかわ けんしょう)先生が来られる予定です。

と き:平成21年6月27日(土)  ところ:馬見原公民館

時 刻
学 会 内 容
9:00
研究発表(7題)
10:30
( 予定)
特別講演
  演題 「人との関わりと仏教」

  講師  藤川 顕彰先生

 

平成21年5月号

〜知って得する健康講座 第11集〜 大腿骨頸部骨折            病院長 水本 誠一

はじめに
  今年は暖冬だったとはいえ、長かった冬がようやく終わり、いまや緑と花いっぱいの季節になりました。生き物は元気に活動をはじめ、人間も農作業など忙しい季節になりますね。家に引きこもりがちだったお年寄りも少しずつ手足をのばして活動範囲を広げてゆきましょう。おっと、そこで注意していただきたいのが、本日お話しする大腿骨頸部骨折です。

大腿骨頸部骨折とは?
  大腿骨というのは太ももの骨で、大腿骨頸部とは足の付け根の関節(股関節)部分のことです(図1参照)。ここの部分を骨折し足の付け根の痛みが強く、立って歩くことができなくなったり、足を動かすと強い痛みが出る病気が大腿骨頸部骨折です。骨がもろくなる骨粗しょう症を基礎疾患にもつお年寄り(特に女性)が、転倒したりした際にこの場所の骨折をよくおこします。
  つまり、これからお年寄りの皆さんが、固まった筋肉をほぐしつつすこしづつ体を動かし始める時期に、転倒する機会が増えこの骨折が心配になるのです。日本では年間約10万人が受傷、今後高齢社会が進むにつれてさらに増加が予想される重要な骨折です。骨粗鬆症の進行したお年寄りでは、手首の骨折(橈骨遠位端骨折)、肩の付け根の骨折(上腕骨頚部骨折)、背骨の骨折(脊椎圧迫骨折)と太ももの付け根の骨折(大腿骨頚部骨折)が4大骨折と呼ばれており、非常に軽微な(ベッドからの移動や軽くぶつけただけ)外傷でも発生します。 この4大骨折の中でも単なる骨折にもかかわらず、「寝たきり」となり色々な合併症(床ずれや肺炎、認知症など)を引き起こし、最悪の場合には生命に関わる重要な骨折が大腿骨頚部骨折です。

大腿骨頸部骨折の原因は?
  大腿骨頸部骨折の原因は、前述しましたようにほとんどの場合は転倒です。高齢になると筋力や反射神経が低下して、しばしば手をつくこともできないままに転倒してしまいます。運動能力が低くなって小さな段差につまずくことも多いので、外出先だけでなく、風呂場など自宅内や自宅玄関付近で転倒して大腿骨頚部骨折をおこすことも珍しくありません。また、ほとんどが骨がもろくなっていて骨折しやすい骨粗しょう症を背景としてもつ人に起こってきます。

大腿骨頸部骨折の治療について
  以前は、大腿骨頸部骨折をきっかけに死に至る人も少なからずありました(20〜30%)。それは骨折を癒合させるまでの間ベッド上で動けない状態がつづくうちに、褥瘡(床ずれ)、肺炎や膀胱炎などの余病を併発することが多かったためです。そこで最近ではできるだけ早期に歩行できるようにすることが大切とされています。ひびだけの場合や他の病気で体の状態が悪く手術が不可能な場合を除いて、ほとんどの場合は手術による固定が必要です。しかし、残念ながら山都町内では大腿骨頸部骨折の手術ができる病院はなく、現状では救急車で熊本市内の病院に紹介しています。蘇陽病院に常時手術ができる整形外科医を獲得したいと考えていますが、全国的な整形外科医が不足している現状ではなかなか困難です。万が一骨折を起こして熊本市内の病院に運ばれたとき不安にならないように、今回は少し手術の内容についてもお知らせしておきます。 関節は骨と骨の連結部で関節包という袋に包まれています。大腿骨頚部骨折は、この袋の内側でおこった内側骨折と袋の外側でおこった外側骨折に大きく分けることができます(図2)。骨折した部位が関節包の内側か外側かによって手術方法が異なります。これは関節の外側では血流が良いため骨がくっつきやすく、内側では血流が乏しく骨がくっつきにくい為です。

1.大腿骨頚部内側骨折の場合
  骨接合を行っても骨頭への血流が悪いために骨頭壊死(こっとうえし)を起こすという合併症が約1/3に発症します。ですから、はじめから骨どうしをつなぐこと(骨接合)をせず、人工骨頭という金属製のいわば“さし歯”のようなものを入れ、なるべく早く(1週間くらい)歩行練習をさせ、寝かせきりにしない治療を行うのが標準的な方法となっています(図3)。人工骨頭の手術は手術時間は1時間前後で、出血も少なく、高齢者にも比較的安全な手術です。手術後は、旅行を含めて日常生活はほぼ普通に行えるようになります。ただし、骨折のタイプや患者さんの年齢、全身状態によっては骨接合術を選択する場合もあります。

2.大腿骨頚部外側骨折の場合
  スクリューやプレートなど色々な金具を使用し固定します。しかしもともと骨質が低下(骨粗鬆症)している患者さんが多く、骨折部に体重の3〜5倍の力が加わるため転位(ずれ)が発生しやすい(いわゆる「ヌカに釘」状態になりやすい)部分とされており、むずかしい手術の一つです。 最近ではガンマー釘(髄内釘)などの内固定器具の発達と手術技術の向上により、安定した成績が上げられています(図4)。

大腿骨頸部骨折の予防について
  大腿骨頸部骨折の予防としては、毎日歩行や体操をして、筋力と体の柔軟性を維持し、運動能力を低下させないようにし、転倒を未然に防ぐことが大切です。専門的な訓練方法がたくさんありますが、今回は家庭で簡単にできる運動法をお教えします。 まず、「1分間の片足立ち」(図5)です。簡単そうに見えますが、実際にやってみると想像したより難しいものです。ゆらゆらして心配な方は椅子などにつかまりながらでも結構です。目も開けて結構です。この開眼片足立ちを1分間、一日3回行うと、大腿骨頸部には両足で53.3分間歩いたのと同じ運動負荷量になり、骨密度も約60%の方で改善するとされています。これによって筋力とバランス感覚の向上、さらに骨も強くなって転倒防止効果があります。
  もう一つは寝たままでも行える、「尻上げ運動」(図6)です。朝起きるとき、夜布団に入るときなど20回ずつ試してみてください。お尻や太ももの後ろ側の筋肉(大臀部筋と大腿二頭筋)が緊張しているのがわかると思います。この筋肉を鍛えることで歩行能力の向上が期待されます。
 運動と同じく骨粗鬆症(骨が弱くなる病気)の予防も大切です。食事はカルシウム分の多いものを摂ること、それに最近では飲み薬で骨の老化(骨吸収)を予防する方法もありますので、かかりつけの先生に相談されてください。

最後に
  とにかく、お年寄りは転倒されると大変です。普段から体を鍛えることと、ご自分の体力を過信しないことです。膝など調子の悪い方、足に麻痺がある方などは杖やシルバーカーなどの補助具も恥ずかしがらずに使用しましょう。
  それと途中でも述べましたが、残念ながら山都町内では大腿骨頸部骨折の手術がいつでもできる病院はなく、現状では救急車で熊本市内の病院に紹介して手術をしていただき、その後山都町に帰ってリハビリをされることがほとんどです。常時手術ができるように蘇陽病院に何とか整形外科医を獲得したいと今後も努力してゆきます。よろしくご支援のほどお願い申し上げます。 さあ、これから快適な季節を迎える山都町です。元気を出して頑張ってゆきましょう。


蘇陽病院内見て歩き 看護助手の紹介                  看護助手 山本 生子

 心浮き立つ本格的な春の到来に皆様如何お過ごしでしょうか。 現在、8名の看護助手(常勤1名、嘱託7名)で勤務にあたっており、看護師が業務をスムーズに行えるよう日々サポートしております。主な業務としては、医療行為や看護とみなされないものを担当することになり、入院患者さんの食事・入浴等の介助、リハビリ室への送迎などがあります。 食事:早朝7時前には患者様へオシボリの配布、7時30分より食事の配膳を行っております。患者様一人では食べられない方への食事介助をしております。 入浴:午前午後に分けて患者様の入浴介助を行い、安心してくつろいで入浴していただいています。 リハビリ送迎:病室からリハビリ室まで患者様の送迎(車イス)を行い、リハビリによる体力の向上を行っていただいております。 全ての患者様の気持ちと人格をよく理解し、地域の皆様に応えられるよう今後も一層頑張っていきます。


『ダイエット外来』および『ダイエット講演会』のお知らせ

 当院ではメタボリック症候群の予防の観点から毎月第3水曜日午後に『ダイエット外来』診療をおこなっています。

科 名
担当医師名
診察曜日

ダイエット外来
(整形外科)

堤医師
第3水曜日午後
※予約制です。

 また、診察終了後は下記のとおりダイエット講演会を開催しています。なお、当講演会は参加自由(無料)ですので多数の御出席をお待ちしております。

日 時:毎月第3水曜日 16時より約30分
場 所:蘇陽病院 支援センター会議室
講 師:堤 隆治先生(堤整形外科クリニック)
平成21年4月号

〜院長コラム〜 〜 凡そ小児を安らかに育つるには・・ 〜        病院長 水本 誠一

 皆さんは貝原益軒をご存知ですか。平賀源内と並び称される博物学者、薬学者で、儒学者でもあります。有名な「養生訓」を書いた人というとおわかりかもしれませんね。その貝原益軒が宝永7年(1710)、81歳の時に「和俗童子訓」という、我が国初の教育書を書いていますので、本日はその一節を紹介します。

 『凡そ小児を安らかに育てるには、三分の飢と寒とをお(帯)ぶべし・・(以下省略)』 つまり、「小児は、少し空腹にさせ、少し冷たい思いをさせながら育てるのがいい。 子供に美味な食事をあたえ、上等な着衣を与え暖めすぎるのは、体が弱くなりのちのち大きな厄になる。子供だけでなく、大人にもこうした苦労をさせるといい。」と言っています。

 近年、子供さんの食環境、生活環境は激変しました。食べものは何処にでも溢れ、親は「子供にだけはひもじい思いをさせたくない」と豊富に与えます。また暖房のきいた部屋でコンピューターゲームやテレビを見て過ごす時間が多くなり、山都町のような山間農村でも野山を駆け巡る子供をほとんど見ません。適度な通学距離だった学校が統合されスクールバスが完備されたため歩く距離も減りました。「子供は風の子」というのは死語になったようです。

 私は昨年春に赴任しましたが、現役で田畑や山林を守るご高齢の方々がとてもお元気な半面、子供と子育て世代に肥満傾向の方が多いのにとても驚きました。肥満を出発点に糖尿病や高脂血症が重ねて発病する「メタボリックシンドローム」という言葉がすっかり定着した感がありますが、小学生・中学生には「小児生活習慣病」として危険がせまっています。

 ハンバーグやカレー、ポテトチップスなど簡単で脂肪豊富な食事ばかりさせていませんか? せっかく近くの田畑で採れた新鮮な野菜や米が豊富ですから、「一汁三菜」といった伝統的でバランスのとれた食事をしましょう。室内遊びばかりさせないで外遊びをさせましょう。休みの日には農作業や地域の行事に連れ出してお手伝いさせましょう。これは次世代に伝統を引き継ぐ大事なことだと思います。「町からメタボの火を消そう」の合言葉で世代を超えて取組みましょう。


〜知って得する健康講座 第10集〜 花粉症                医師 米山 哲司

花粉症とは
 
花粉に対して起こす人間のアレルギー反応をいいます。ほとんどのアレルギー反応では、免疫システムが最初にアレルゲン(:アレルギーの原因物質のことをいいます。ここでは花粉)に接したときに免疫グロブリンE(IgE)と呼ばれる抗体がつくられます。このIgEは、血流中の好塩基球と呼ばれる白血球の1種と組織の肥満細胞とに結合します。最初の接触により花粉に感作されて過敏になりますが、この段階ではアレルギー症状は起こりません。その後、再度花粉に接すると、表面にIgEをもつ細胞はヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエンといった物質を放出し、周囲の組織に炎症を起こします。特にヒスタミンには血管拡張作用があり、この作用によりアレルギーの症状である、くしゃみ、鼻水などが発生するといわれています。

花粉症の原因は?
 
スギ林は全国の森林面積の約18%を占めており、その多さから花粉症患者の約70%はスギ花粉が原因といわれています。その他は、樹木ではヒノキ・シラカンバ・ハンノキ、草木ではイネ・ブタクサ・ヨモギ・カナムグラが主な原因とされています。樹木は春に、イネは初夏に、そしてブタクサ・ヨモギなどのキク科は真夏から秋口に飛散します。花粉症に季節性があるのはこのためであるといわれています。

花粉症が多い県は?
  スギ花粉症有病率は熊本県では13.6%で、全国平均26.5%から見ると全国平均を下回っており意外な結果でした。ちなみに1位は私の生まれ故郷の山梨県で44.5%でした。もともと山国なのですが、隣県(東京・神奈川など)からのスギの飛散も多く不名誉な結果となったようです。現在、環境省の花粉観測システム(はなこさん)で花粉の飛散状況がインターネットで公開されております。観測点が高森町にもあるので、山都町にはかなり信頼性のある情報源です。よかったら覗いてみてください。

予防について
 花粉に接しないことが一番ですが、完全に花粉から避けることはできないのが現状です。どのような予防策があるのでしょうか?一般的には、マスク、うがい、洗顔、衣類、めがね、帽子などが挙げられます。マスクは吸い込む花粉を1/3〜1/6に減少させるともいわれていますし、めがねは1/2〜1/3に目への進入を防ぐといわれています。またうがい・洗顔は付着した花粉を除去する効果があり、衣類も表面がすべすべした綿やポリエステルなどの化学繊維を着ることで花粉の付着を減らせるとの報告があります。自分にあった方法を試してみてはいかがでしょうか?どの方法も完全防備にはなりませんのでくれぐれも過信は禁物ですが・・・。

治療について
 花粉症の治療には、症状を軽くする対症療法と根本的に治す根治療法があります。主に対処療法が行われ、その方法は内服薬、点眼、点鼻であり、それぞれの症状によって組み合わせて使用されております。例えば、くしゃみ・鼻水が強い場合は抗ヒスタミン薬の内服が、鼻づまりが強い場合はロイコトルエン拮抗薬や鼻散霧用ステロイドなどという具合に。現在、鼻アレルギー診療ガイドラインに重症度分類とそれに応じた治療法の選択が記載されており、ガイドラインに沿った治療が各医療機関で行われております。かなり専門的な話になりますので、詳細はこの紙面では控えさせていただきます。

最後に
  実は私も花粉症でした。20年前京都の病院で研修医をしていたころの3月に突然目が痒くなり、涙は出るは、鼻水が滝のように出るはでティッシュなしには仕事ができない状態になりました。これが花粉症なのかと実感したのを覚えております。幸い?転勤のため他県に引っ越したことがよかったのか、以後症状は出ることはありませんでしたが、毎年3月になると花粉症にならないかと心配しています。 そして、今年も花粉症の季節がやってきました。町民の皆様がくしゃみ・鼻水・などの花粉症症状でお悩みのことがありましたら、早めに最寄りの医療機関を受診していただけたらと思っております。


蘇陽病院内見て歩き  訪問看護ステーション                主任 興梠 美鈴

 梅の花、菜の花が咲くころになり訪問看護師には幸せな季節となりました。雪道の運転も上手になり、タイヤが滑るのにもやっと慣れてきたところでした。
私たち訪問看護ステーションは、利用者が“その人らしく”自宅で安心して療養していただく為に自宅に訪問して看護サービスを提供しております。サービスの内容としては症状の観察・日常生活の援助・日常生活におけるリハビリ・医師の指示による医療処置などです。利用者は1月約30〜35名、実施地域は山都町全域と宮崎県の一部(五ヶ瀬町)です。
  昨年は58名の利用者があり、21名のかたが訪問を終了されました。その内訳として12名が医療機関へ入院、2名が施設に入所、7名のかたが自宅で亡くなられました。 「おかげさまで助かりました」という御家族の言葉によって役に立てたんだという実感を味わう事ができ、また深い関わりの中で利用者や御家族のかたから様々なパワーをいただいている事に気づきます。そのパワーを感じて私たちは今日も笑顔でマイ訪問車を走らせています。


訪問看護ステーションスタッフ

訪問先にて
平成21年3月号

〜院長コラム〜 地産地消と“地医地療”                  病院長 水本 誠一

 昨年は「産地偽装」や「毒入り餃子」事件など、食の安全についての信用を根底から覆すニュースが世間を騒がせました。安全面ばかりか地球温暖化防止の面からも、遠くの国から重油燃料を消費して運ばれてくるものばかり利用するのは適切ではありませんね。やはり、安全で新鮮な物を食するには、生産者や販売者の顔が見える食材を地元で買って食べることが一番です。お買い物も熊本市の大型店ばかり利用していては、やがて山都町からは商店がなくなり日用品すら買えなくなる日が来るかもしれません。ですからいわゆる、「地産地消」の考え方がとっても大事ではないでしょうか。

 私は医療の面にも同じことが言えるのではないかと思います。統計では、山都町を含めた上益城郡の皆さんは、地域内の医療機関を利用されている方は約半数で、多くは熊本市の病院を利用されているとのこと。もちろん食べ物と人の命は違うとの意見もあるでしょう。しかし、山都町には病院が4つ、医院が5つ、医師も19人(平成18年医師調査による)も在籍しており 、それぞれ経験豊かで山都町の表も裏もご存知の先生たちです。自分たちでできる治療とできない治療、また地元で治療したほうが患者さんにとって幸せだろうと思われる病気など熟慮されており、高度の医療機関に紹介する場合も“人脈”をお持ちです。これら地元の医療資源を大事に利用し、住民の皆さんで“育ててゆく”という視点(これを「地医地療」と名付けました)も必要ではないでしょうか 。

 先日も夜中の4時に急性心不全の患者さんが蘇陽病院に救急搬送されました。到着後みるみるうちに意識状態、呼吸状態が悪化し、気管内に管を入れて人工呼吸をすぐしためにどうにか助かられました。もし病院がなかったらこの患者さんは亡くなっていただろうと思われ、地域医療の灯を消さないように頑張ってゆこうと改めて決心したものです。 今年は山都町として2期目の新たな出発の年です。医療の面も議論と相互理解を重ねてゆき、皆様と共に住みよい山都町になるように頑張ってゆきたいと思います。


〜知って得する健康講座 第9集〜 便潜血から大腸ポリペクトミーまで      医師 末綱 靖

 今回は、大腸がん健診から内視鏡を使った実際の治療までを紹介したいと思います。

便潜血陽性
  大腸がんの検診方法として最も一般的に行われているのが便潜血検査です。これは一言で言うと「ウンコに血が混じってないかどうか」を調べるものです。大腸の病変(特に大腸がんやポリープ)は出血しやすいという特徴がありますので、これを利用して早期にがんを発見したいというわけです。ですから、便に真っ赤な血液が付着していれば誰でも分かりますが、実際には目にみえない様なごく微量の血液を検出しています。もちろん大腸がん以外でも便潜血陽性となる場合はたくさんあります。胃潰瘍や痔がある人、大腸炎を起こしている場合、生理中の女性、はたまた血の滴るステーキを食べても陽性となります。そこで、本当に大腸がんかどうかを見極めるため、次に精密検査が必要になってきます。

大腸内視鏡検査
  精密検査としては注腸X線検査(お尻からバリウムを入れる方法)と内視鏡検査の2つがありますが、内視鏡検査はテレビ画面でリアルタイムに見ることができ、しかも場合によってはすぐ治療ができるなどの利点があります。最近では当院でもこの方法を用いて年間200例以上の患者さんに検査を行っています。  まず検査を受けるためには、便をすべて出し腸の中を空っぽにする必要があります。便が残っていると十分な観察ができないため、検査の準備はとても大切です。そのためには下剤(腸管洗浄剤)を飲んでもらいますが、下剤の量や方法は普段の排便習慣によって多少異なります。

自宅で飲む在宅法:
  病院内で飲むのは安心感もありますが、ほかの患者さんとトイレを共有して使ったり、長時間病院内で過ごすので疲れてしまう事もあります。“トイレが気遣いなく使える、リラックスできる、簡単な仕事や家事などをしながら下剤が飲める”などの利点があります。腸の中の便を洗い流すため、検査前日の夜に腸管洗浄剤1リットルを飲み、検査当日の朝6時から残りの1リットルを約2時間かけて飲んでもらいます。飲み始めると頻回にトイレに行くようになります。そして便を完全に出しスッキリしてから来院し、検査を始めます。
病院で飲む院内法:
 特に一人暮らしの高齢者や他に病気があり、看護師の介助が必要な患者さんはこの方法をお勧めします。朝9時30分までに来院し、その後2リットルの腸管洗浄剤を約3時間かけて飲んでもらいます。その都度、看護師が便の性状をチェックしてから検査を行います。当院では主に院内法を行っています。
  大腸内視鏡検査ではまず検査台に横向きに寝てもらい、麻酔薬を注射したあと肛門から直径12mmの内視鏡(カメラ)を挿入します。大人では腸の長さはおよそ1m20cmから1m50cm程度あります。一番奥の盲腸までカメラが達すると空気を入れ、カメラを抜いていきながら直接腸の内腔観察をします。注腸X線検査に比べて見落としや誤診も少ないばかりか、大腸ポリープがあった場合にはその治療も同時に行えるという利点があります。

大腸ポリペクトミー
  大腸ポリープは大きく分けて、がんとは関係ない過形成性ポリープと、主にがんの芽といわれる腺腫性ポリープに分かれます。基本的に過形成性ポリープは治療の対象とはなりません。癌化する可能性がある腺腫性ポリープはポリペクトミーの対象となります。最近ではポリープを切除するためにお腹を開いて手術をする(開腹手術)ことはほとんどなく、内視鏡を使ってポリープの頭だけを切除する方法(ポリペクトミー=癌の可能性が低い場合)や周囲の粘膜を少し含めて切除する方法(内視鏡的粘膜切除=癌の可能性がある場合)が普及しています。ただこれらの方法は大腸の粘膜を電気的に焼いて取るため多少の危険を伴います。

 以下の図に大腸ポリペクトミーの模式図をお示します。

1. 内視鏡でポリープの形状・性状や正常粘膜との境界がどこまで及んでいるのかなどを観察します。
2. 内視鏡の先端よりポリープ切除のための電気メスをだします。
※ループ状の電気メスは普段は白い筒の中におさまっています。
3. ループ状の電気メスを開きポリープにかぶせます。

4. ループ状の電気メスをポリープの付け根(正常粘膜との境界)までかぶせていきます。
5. 電気メスを徐々に縮めて、取り残しのないよう辺縁の境界部分に電気メスの刃をあわせていきます。
6. 取り残しのないことを確認しながらさらに縮めて、ポリープの全辺縁を絞厄していきます。

7. 必要以上に深く絞厄してしまうと穿孔などの危険性もあるため、ループ状の電気メスの弛め・絞めを繰り返し、深い層(筋層)の巻き込みを防ぎます。
8. 火傷を最小限に抑えるため電気メスをしっかり絞厄し、ポリープをスネアで軽く持ち上げて通電を行い切除となります。痛みは感じません。
9. ポリープ切除完了です。この後、取り残しはないか、出血はないか、切除の深さはどの程度かなどを観察し問題がなければ終了となります。

 ポリペクトミーは外科的に開腹することもなく、また痛みもないため非常に優れた方法と言えますが、病変部を切除することには変わりありません。ポリープの数、大きさ、形、あるいはポリープ内部の血管性状などによっては、まれに予期せぬ合併症(出血や穿孔=腸の壁に孔が開くこと)を起こすことがあります。施設によっては日帰りポリペクトミーを行っているところもありますが、当院では原則的に一泊入院をお願いして経過観察をしています。  みなさんも、住民健診や人間ドックなどで「便潜血陽性」とか「大腸ポリープ」といった言葉を目にされたときにはお気軽に当院医師までお尋ね下さい。


蘇陽病院内見て歩き  看護科(第3回)      病棟部門の紹介        病棟師長  平川知恵美

 山都町民の皆様寒い日が続いておりますが、如何お過ごしでしょうか? さて今回は、病棟についてお話したいと思います。スタッフは、看護師22名(年齢50歳から30歳代のベテラン看護師です)、看護助手8名です。日勤に看護師8名と助手4名夜勤3名で業務をしています。入院ベッド数57床に対し平均約50名の患者様が入院されております。平均年齢80歳以上とご高齢の方が多く、担架で搬送する方16名、車椅子にて搬送する方24名,自分で歩ける方10名くらいです。毎日スタッフは、走り回って働いております。

 そんな中である患者様からこんな言葉をいただきました。“つらい事,うれしい事、その他色々あると思いますが、自分の選んだ道頑張って下さい。白衣姿はなんともいえないですね”。この言葉どおり自分たちが選んだ道です。初心を忘れず、精一杯患者様に信頼されるように努力してまいりたいと思います。また、今年の目標に院長先生より“耐えて、和して,前進”と話されました。私たち看護師もこの言葉を胸に、住民の皆様に蘇陽病院に入院して良かったと思われる看護を目指したいと思います。どうぞこの一年宜しくお願いいたします。


病棟スタッフ

看護部勉強会

食事介助

入浴介助
平成21年2月号

〜新年挨拶〜                               院長 水本 誠一

 山都町住民の皆様、明けましておめでとうございます。昨年末から始まった世界的な経済危機の中で迎えた新年ではございましたが、久しぶりに都会から帰郷されたご家族と貴重な時間を過ごされた方々も多かったのではと推察いたします。山都町立蘇陽病院の院長を仰せつかっております、水本誠一でございます。

 さて、私が熊本市の民間病院から昨年4月に赴任しましてからはや9ヶ月が過ぎました。この間、皆様のご期待に添える病院となるようにさまざまな取り組みを行なってまいりました。まだ改革の緒に就いたばかりですが、少しばかりご報告させていただきたいと思います。

 まず、山都町唯一の救急病院としての対応でございます。夜間の救急受診が月平均で145件あり、また救急車も月に約20台と昨年を上回るペースで受け入れております。蘇陽・清和地区はからの搬入が主ですが、矢部地区からの患者さんも17.4%を占め次第に増加しております。救急車で来院された患者さんのうち51%が入院となり、11%が熊本市内の病院に転送となっています。医師や放射線・臨床検査のスタッフに大きな負担となっておりますが、職員一同使命感を持ってがんばっています。全ての疾患や病状について、一般病床数57、医師数6名、看護師数30名の当院で担当することは到底できないことは当然です。従って、安心・安全の医療を提供するために「私共にしかできないこと、私共にできること」をしっかりと見極め、医療連携を更に推進していかなければならないと考えています。

 ご存知のように、広い山都町に点在する小さな集落に、老老介護をされている家庭、一人暮らしの世帯がたくさんあります。当院は訪問看護ステーションと3ヶ所の僻地診療所を運営しており、この方々の保健・医療・介護を積極的に担うことも目標にしています。昨年は、慣れ親しんでこられた自宅で臨終を迎えたいと希望される患者さんを3人看取らせていただきました。医療の原点とも言うべき「病院だけに閉じこもらない医療」を今年も目指して行きたいと思います。

 蘇陽病院は築40年を経過し老朽化が著しく、病院のリニューアルに向けて昨年から検討を重ねております。また本年度は総務省から自治体病院に対して改革プランの作成を義務つけられており、年度末に向けて鋭意準備中です。それに伴いまして昨年暮れには住民の皆様にアンケートのご記入をお願いいたしましたところ、たくさんのご意見や励ましのお言葉をいただきありがとうございました。これらを参考にしながら、今年からの病院改革、改築計画、さらに山都町全体の保健・医療のありかた等に具体的に反映させてゆく所存です。今年からは、住民の皆様のご意見を直接お聞きする機会も増えてくるかと思いますので、よろしくおねがいいたします。

 現在の日本はあらゆる分野で積年の問題が噴出し、国民全体の生活を脅かすような状況です。そんな中で蘇陽病院も少しでも赤字とならないように努力しているところです。収入の面では、全国的な医師不足の中で適切な診療科の専門医師をバランスよく招聘することは不可能に近く、専門的診療で高収入を上げることは困難です。また診療の質を高めて看護基準(医学管理料)を引き上げ高収入を得ることも、「公務員削減」の大原則の前に困難なものがあります。しかし、一口に病院の収入を上げるといっても、この過疎地の中で受診していただく患者さんの数をどんどん増加させることは困難なわけですから、限られた患者さんに対して少しでも多くの治療費をいただくことになり、年金でお暮らしになるお年寄りのご負担が多くなりなかなか難しいものがあります。病院が当面黒字化されても地域の方々が困窮するのでは真の医療とはいえず、当院は地域の方々から見放されることになりかねません。

 一方の支出の面では、これまで取り組まれてこなかった薬品、診療材料や修繕費の価格交渉を見直し、400万円ほどの経費削減ができました。しかし職員の人件費などについては公務員規定で縛られており思うようには手がつけられないのが現状です。一方で非公務員型の独立行政法人や民間への経営移行なども考えられますが、そうなった場合にさまざまな医療スタッフ(=国家資格を持った専門家)が山都町に集まってくれるか、これも困難なことは想像に難くないと思います。

 そもそも、10年ほど前までは全国の「いなか」はそれなりに住みやすいところでした。その中で教育や医療は地域の大切な社会基盤であり、歴史と伝統に基づいた文化財産でもあると捉えられてきました。ところが近年では、農業も林業も建設業も採算が合わなくなり、そして教育や医療も同じような経済至上主義の思想の元、採算が合わないと切り捨てられるようになってきたのは、いったいなぜなのでしょうか。このままの社会の流れで良いのでしょうか。今般の世界的経済危機は、まさに日本人全体、いや世界人類にこの問いについて真剣に考える機会を与えているものと思いますし、きっと社会の潮目が変わってくる時がくると信じています。農林業者、医療者、行政、その他住民全体が一体となって、見えない敵に立ち向かって行くべき時と思います。

 私は、「病院づくりは地域づくり。病院あっての地域、地域あっての病院」と思っております。そして今年の私のモットーは「耐えて、和して、前進」です。あらゆる機会を捉えて皆様と話し合いを持ち、お気持ちやご意向を病院運営に活かせるよう努力する所存でございますのでご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申しあげます。


〜知って得する健康講座 第8集〜   感染性腸炎について           内科 南 信弘

 町内の皆様、明けましておめでとうございます。今年も例年のように寒い日が続いております。今回はこの季節に毎年のように流行する感染性腸炎のはなしです。

 感染性腸炎といえば、平成18年にノロウイルス感染による死亡者が出たというニュースが流れ、まるで殺人ウイルスのような取扱いがされたことがあります。ノロウイルスは、以前小型球形ウイルスと呼ばれたウイルスの一種でありますが、実は冬季の感染性腸炎の主な原因であり、決して珍しいものではありません。死亡した方のほとんどは、すでに体力の無くなった寝たきりの高齢者であり、元気な人が死にいたることはまずありません。感染性腸炎に対するきちんとした知識をもつことが大事なことです。

 感染性腸炎とはいわゆる「腸の風邪」です。腸炎は腸に炎症をおこして起こった病気の総称で、その中でも細菌・ウイルス・原虫などの病原微生物が原因となっているものを感染性腸炎といいます。病原微生物が大量に増殖して腸管粘膜に炎症を引き起こしたり、毒素を産生したりして腸炎をひきおこします。口を通して病原微生物が感染することが多く、食中毒の多くも感染性腸炎と考えられています。また珍しい原因として、抗生剤を使用したために腸内に通常すみついている細菌(善玉菌)が死滅し、抗生剤抵抗性の別の細菌(悪玉菌)が増殖して大腸粘膜に炎症を起こすことがあります。

 病気の症状としては、吐き気・嘔吐、食欲不振などの上部消化管症状や、下痢や腹部不快感などの下部消化管症状が現れ、発熱を伴うことも少なくありません。病原微生物の種類や個人差により症状の出方は違いますが、ノロウイルスを例にあげれば、通常2日ほどで症状が軽快するといわれていますし、他の病原微生物であっても1週間以内で治る事が殆どです。

 病気の診断は、初診時には症状の出現状況と下痢およびその他の症状とから総合的に判断することが一般的で、いきなり病原微生物の検査を行うことはあまりありません。なぜなら、病原微生物の確認のためには、便の細菌培養や顕微鏡、ウイルスなどの精密精査を行う必要がありますが、便の細菌培養の場合は少なくとも3〜7日以上の培養期間が必要であり、病原微生物がわかった時には既に治っている事がほとんどで、治療に反映されることが無いからです。またウイルスが原因の場合でも、殆どが有効な治療薬はないため、これも診断が治療に反映されることはまずありません。我々が病原微生物の精査を考慮する時は、下痢が1週間以上持続する場合や重篤な腸管感染症が疑われる場合がほとんどです。

 病気にかかったときの対応としては、まず下痢が出てきたら、脱水を防ぐために水分を補給することが大切です。スポーツドリンクは下痢の時に失われがちなカリウムなどの電解質を含んでいるので、このような時には適切な飲料となります。  吐き気・腹痛が強かったり、高熱があったり、血便があったりする場合、また手足の麻痺があるような場合には、早めに医療機関を受診することが必要です。数時間前にいっしょに食事をした人たちが同時に同じような症状を起こした時は、食中毒の可能性が高く、医療機関を通して保健所への届け出が必要になることがあります。

 病原微生物が腸から排出されてしまえば症状はなくなるので、その手助けをするのが、腸炎の治療薬になります。治療に用いる薬は、主には整腸剤と吐き気止め(制吐剤)の内服薬です。下痢止めの薬(止痢薬)は、病原微生物を腸管内にとどめて病気を長引かせるため、症状が強い時以外は用いることはありません。また抗生剤使用も、細菌が原因であると強く疑う時以外は用いません。抗生剤使用が新たに難治性の腸炎を誘発する時があるからです。点滴による治療は摂食ができない時や脱水が強い時に行います。

 病気の予防は、うがい・手洗いにつきます。感染性腸炎の多くは経口感染であり、感染経路である口の中と手をよく洗うことで、感染を防ぐことが出来ます。消毒薬を併用すると有効なことがありますが、単なる水でのうがい・手洗いだけでも大変有効です。マスクをすることも感染経路を防ぐ意味では大変有効な手段です。  以上の事に注意して、寒い山都町の冬を元気に乗り切りましょう。


蘇陽病院内見て歩き  看護科(第2回)                   外来師長 黒木あけみ

 山都町の皆様、新年明けましておめでとうございます。本年も蘇陽病院をどうぞ宜しくお願い致します。

 今回は、先月号に引き続き、外来看護部門を紹介させていただきます。外来スタッフは、現在8人で対応しています。

 外来スタッフは、4つの診察室の医師診察介助の他に、内視鏡室と手術室の介助、管理も担当しています。当院は、僻地医療拠点と救急指定を担う病院ですので地域住民の皆様に温もりや満足のいく看護だけでなく、的確で迅速な看護技術が提供できますよう努力しております。

 当外来は、5人の常勤医師による一般外来の他、循環器科、整形外科、眼科は専門診療があります。10月から神経内科(第1土曜日午前)、ダイエット外来(第3水曜日午後)が新たに加わりました。診療時間予約制を導入しております。予約は前日までに連絡を下さい。新患の方はスタッフがすべて問診させていただきます。できるだけ待ち時間が長くならないよう取り組んでおります。30分以上お待ちの方は、スタッフに一声お掛けください。

平成21年1月号

〜知って得する健康講座 第7集〜 歯科疾患から          柏歯科診療所 甲斐 義久

 第7集はメタボからちょっと離れて、歯科のお話です。歯科疾患は「むし歯」と「歯周病」の二大疾患が広く知られていると思いますが、その他にもたくさんの病気があります。今回は、最近話題になっている「ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死」についてお話したいと思います。

●ビスホスホネート(以下BP)系薬剤とは 簡単に言うと、骨吸収を阻害する薬剤で、大きく注射用と経口製剤に分かれます。注射用製剤は、骨転移製悪性腫瘍・悪性腫瘍による高カルシウム血症・多発性骨髄腫などの疾患の治療に用いられ、経口製剤は、主に骨粗しょう症の治療に用いられます。参考に国内で販売されているBP系薬剤を(表1)に示します。

表1
剤型
製品名
適応症
製造販売
注射用
アレディア
悪性腫瘍による高カルシュウム血症
乳がんの溶骨性骨転移
ノバルティスファーマ
オンクラスト
悪性腫瘍による高カルシュウム血症
万有製薬
テイロック
悪性腫瘍による高カルシュウム血症
帝人ファーマ
ビスフォナール
悪性腫瘍による高カルシュウム血症
アステラス製薬
ゾメタ
悪性腫瘍による高カルシュウム血症
多発性骨髄腫・固形癌骨転移
ノバルティスファーマ
経口
ダイドロネル
骨粗しょう症・骨ベーチェット病
大日本住友製薬
フォサマック
骨粗しょう症
万有製薬
ボナロン
骨粗しょう症
帝人ファーマ
アクトネル
骨粗しょう症
味の素
ベネット
骨粗しょう症
武田薬品工業

●BP系薬剤関連顎骨壊死とは 典型的な症状は、疼痛・歯肉の腫脹および感染・歯の動揺・排膿、骨露出で、診断基準は(表2)のように定められています。まあ、簡単に言うと、顎の骨が腐ってしまう病気と言うか、薬の副作用で生じる疾患です。頻度としては、注射用製剤で、10万人年中り95件、経口製剤が0.7件と言われています。

表2(米国口腔外科学会より)
1) BP系薬剤による治療を現在おこなっているか、または過去におこなっていた。
2) 顎顔面領域に露出壊死骨が認められ、8週間以上持続している。
3) 顎骨の放射線療法の既往が無い。

 発生機序は、残念ながら今のところ明らかになってはいませんが、骨代謝回転抑制作用もしくは血管新生抑制作用によるものではないかと考えられています。治療に関しては専門的になりますのでここでは割愛させていただきます。

●BP系薬剤と歯科治療 BP系薬剤関連顎骨壊死は自然に発生することもありますが、抜歯や歯科インプラントなどの顎骨に侵襲を与える歯科治療や不適合な義歯による粘膜の損傷と関連して発症することが多いと言われています。本邦においては今まで注射用製剤でのBP系薬剤関連顎骨壊死の報告しかありませんでしたが、最近、経口BP系製剤による報告も見受けられるようになりました。
  幸いなことに私はこの疾患に遭遇したことはありませんが、「骨粗しょう症」のお薬を飲んでおられる方はたくさんいらっしゃると思いますので確率的にはゼロではありません。BP系薬剤関連顎骨壊死を未然に防ぐためにも、歯科を受診される場合は問診時に必ず、服用されている薬を正確に申し出るようにお願い致します。

(柏歯科診療所 蘇陽病院から高森方面へ11km、本庁からは北東に25km程離れた、山都町の一番端っこに位置する小さな歯科診療所です。 )


蘇陽病院内見て歩き  看護科(第1回)                   看護師総師長 赤星 美鈴

 看護部の各部署について4回シリーズで紹介します。

●看護部理念
    1.患者様主役の信頼される看護を目指します
    2.医療水準向上の為に、自己研鑽に努めます
    3.地域包括医療の一員として、他職種との信頼関係をつくり協働します

●職員は看護師41名看護助手8名で、病院の中で半数以上を占める大所帯の部署です。 医療を通じて地域の皆様に安全な看護を行い、やさしさと満足を感じていただけるよう日々取り組んでおります。

●病棟の夜勤は2交代制で、16時間勤務です。施設基準では、入院患者様2.6人に対し看護師1名の看護で、看護師全体の7割以上が正看護師です。 ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を図りながら素敵に働いているママさん看護師達です。

●教育委員会
  月一回の会議で年間計画を立て、スタッフ一人一人のレベルアップを目 指した教育活動をしています。勉強会では医師や外部講師を招き、日頃 の業務に役立てています。

●業務改善委員会
  マニュアル(手順書)の改善を行い、看護業務の安全を図り質の向上に 取り組んでいます。

●医療機器管理委員会
  病院全体で行っている委員会活動です。日頃の点検が大変重要な為看護部が中心でおこなっています。安全な医療を行うためには機器の管理は必須です。

●年間行事

4月

新人オリエンテーション 新規採用者に必要な内容について、部署責任者が詳しく説明し明日からの勤務に役立てます。

10月 中学生職場体験・福祉体験学習(清和・高森中学校) 将来看護師や薬剤師などの医療に進みたいと希望している 中学生を対象に、院内の仕事について学んでいただいています。「地元の病院に勤めて欲しい」と願いながら指導しています。
12月 クリスマス会 地元バンドの協力により昔懐かしい曲やクリスマスソングなど演奏していただいています。そのあとは、職員の寄付で準備した贈り物を患者様お一人お一人にサンタクロースからプレゼントです。さて今年のプレゼントは何かな?