〜院長コラム〜 蘇陽病院の正式名称について 〜国民皆保険制度と国保直診病院の役割〜 病院長 水本 誠一
早いもので今年も残すところ一月ちょっととなり、冬仕度を急がなければならない時候となりました。急に寒くなるこの時期は血圧もあがりやすいので、自宅でも血圧を測るなど、健康管理には十分に気を配ってください。
さて、いつもこの「広報やまと」の紙面をお騒がせしている蘇陽病院ですが、正式な名前をご存知でしょうか。少々長い名前ですが正式には「山都町立国民健康保険蘇陽病院」といいます。「山都町立」はわかりますが、その後の「国民健康保険」とはなんでしょうか。国民健康保険に加入している人だけしか来てはいけない病院の事? いいえ、何の保険でもいつでも受診できる病院です。今回はこの「国民健康保険」の意味について書いてみます。
太平洋戦争の焦土の記憶が残る昭和36年に、わが国の国民皆保険制度は完成しました。サラリーマンなどが加入する社会保険(社保)、公務員が加入する共済保険とともに、農民などの自営業者などが加入する国民健康保険(国保)がその根幹をなしています。世界のほとんどの先進国では何らかの国民皆保険制度を有していることが普通ですが、その中でも日本の制度は最も完成度が高く世界に誇れる仕組みでもあります。ところが、アメリカ合衆国はなんと国民皆保険制度がないのです!! オバマ大統領はこれを今から作ろうとしていますが難航しているようです。
昭和36年当時国民から広く保険料を徴収するにあたって、日本国中に“容易に病院にかかれない地域”がたくさんありました。その住民から、病院もないのになぜ保険料を同じように払わなければならないかと不満が噴出しました。そこで、国保は民間医療機関の進出が期待できない僻地にもいつでもかかれる病院を作ることに邁進しました。この理念で設立された病院を「国民健康保険診療施設(国保直診)病院」といいます。蘇陽病院は昭和22年から馬見原の地に当時の6ヶ町立病院として設立され、その後“国保直診”と位置づけされています。熊本県には、国保直診病院は蘇陽病院を含め12あります。
したがって我々の蘇陽病院は馬見原という山都町の一角だけのためでなく、大きく言えば日本全体の医療制度、国民皆保険制度を支える病院であるともいえます。また、国保直診は医療機関として医療サービスを提供することは当然ですが、医療に加えて保健(健康づくり)、福祉(介護)サービスまでを総合的、一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の拠点として活動することをも目標としています。
以上のように、蘇陽病院は今も昔も医療資源に乏しい“九州のへそ”を支える医療機関としての大きな任務を背負っています。もちろん毎年国民保険からは年間500万円程の補助金をいただきながらの運営でもあります。考えてみれば大変大きな任務であると思いますし、それにふさわしい働きができているか常に自己反省しながらの病院経営に努めています。どうぞ皆様のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。
〜知って得する健康講座 第18集〜 肺炎球菌ワクチンについて 医師 井野 裕治
皆さん、こんにちは。寒くなり風邪、肺炎が流行りやすい時期となりましたがいかがお過ごしでしょうか?今回はインフルエンザと同じように肺炎にも予防ワクチンがありますので、それにについてお知らせしようと思います。
肺炎球菌ワクチン『ニューモバックス』は、2歳以上の方なら誰でも接種していただけるワクチンです。 ですが、お勧めする対象は(肺炎死亡率が急激に高くなる)65歳以上の方、免疫能の落ちている糖尿病や心不全・腎不全・呼吸器疾患をお持ちの方です。
肺炎は、現在日本での死亡原因第4位の疾患です。 このワクチンは、全ての肺炎にかからなくするワクチンではありませんが、肺炎にかかりにくくし、かかった場合でも重症化を防ぐ効果が期待できます。 インフルエンザのワクチンとは違い毎年接種していただく必要はなく、一度接種していただくと5年ほど効果があります。 今までは生涯に一度しか打てなかったワクチンですが、10月19日より、再接種が認められたことも含めて三つの改訂ポイントがあります。
1. | 初めての接種から5年以上経過していれば二度目の接種も可能になりました。 |
2. | 接種不適当者の項から「放射線・免疫抑制剤等による治療を受けている方、その予定がある方」が外れました。 |
3. | インフルエンザなど、他のワクチンを接種する場合6日以上あけていただく必要がありましたが、医師の判断で同時接種も可能になりました 。 |
免疫能の高い時に接種していただくとより長く抗体価が持続しますので、65歳以上の早い段階で接種していただくと、より長く効果が持続することが期待できます。
・ 脾臓を摘出された方以外は、全額自己負担のワクチンです(蘇陽病院では6300円です)。
熊本県では初の公費助成が10月から玉東町でおこなわれています。現在、全国では173の市区町村で助成実施、今後も増えていく予定です。山都町でも早く公費負担が実現するといいですね。 というのも、肺炎にかかった場合の治療費用は約25万円/1人。2000円の公費補助を100人の方に行ったとしてもその内1人でも肺炎を防げれば費用は安く済むわけですね。
公費助成のあるところで接種した方々にアンケートを行ったところ1/3以上の方が「風邪をひきにくくなった」や「安心して外出できるようになった」と回答されました。 特殊なワクチンではなく、接種の仕方などはインフルエンザワクチンと同じと考えてください(注射後赤くなったり腫れたりする場合もあります)。
※ただし 現在、ワクチンの製造が接種希望者数に追いつかない状況で品薄の状態です。最寄りの医療機関にお問い合せいただき予約が必要です。
〜蘇陽病院内見て歩き〜 緑川へき地診療所の紹介 副院長 大城 一
今回は蘇陽病院が診療を行なっている3つの診療所の中の一つ、緑川診療所についてご紹介をさせていただきます。
緑川診療所は旧清和村の緑川源流近くにある小さな診療所で、毎週月曜日の午後から診察を行っております。源流ならではのきれいな水と自然に囲まれた のどかな場所で、時折鹿を見かけることもあります。山深い場所で夏場は馬見原よりもさらに涼しく、冬はかなり雪が積もります。今年は2回目のトレイルマラソンが行なわれ、大盛況であったようです。
こちらには30数名の患者様が受診されますが、もちろん高価な検査機器はありませんので、定期処方、注射、採血などを行ない、必要な場合は病院へ来ていただきます。高度な医療ができる訳ではありませんが、高齢者も多く、交通の便が悪い地域ですので、僻地の医療面での不利益を少しでも解消できればと考えております。土地柄もあるのか、皆さん陽気で楽しく、待合室はいつも笑い声であふれており、緑川に訪れるのを毎週楽しみにしております。
〜お知らせ〜
本院ではメタボリック症候群治療の観点から毎月第三水曜日午後に『ダイエット外来』診療を行ってまいりましたが、平成22年より休止することとなりました。これまで診療にかかられた患者様は引き続き常勤医にて対応致しますので何卒宜しくお願い致します。